
バッテリー上がりの原因とは? 知っておきたい予防と対策
目次

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はじめに
トラックをはじめとするすべての車両は、バッテリーが機能しなければ始動すらしません。バッテリーが上がってしまう原因を知り、その予防と対策の方法を知っていただくために今回の『豆知識』を用意しましたので、ぜひ参考にしてください。
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車のバッテリー上がりとは?
トラックをはじめとする車両のバッテリー上がりとは、バッテリーの電力量が不足してしまってエンジンがかからなくなってしまう状態を言います。バッテリーは車両におけるさまざまな装備に電気を送っています。
まずはエンジンの始動です。エンジン始動時の最初の爆発である「初爆」で高い電力を必要とします。そのため、バッテリーが弱り、上がった状態になるとエンジンがかかりにくくなってしまいます。
これは、トラックに多い電力で作動するディーゼルエンジン特有のグロープラグが電力不足で正常に動かなくなるためです。バッテリーの電力でグロープラグがなかなか加熱できず、エンジン内部に送り込む燃料の混合気を熱することができないのが原因です。特に温度差が大きい冬期の、気温の低い日のエンジンがかかりにくければ、バッテリーが弱っている状態です。
そして、バッテリーが上がってしまうと、電気で作動するキャビン内の機器類が動かなくなってしまいます。室内灯、路肩灯、車幅灯や看板灯も点灯できません。エアコンもヒーターも作動しません。会社との通信機器も使えなければ、もちろんスマホへの充電もできなくなってしまいます。エンジンが動かないのでテールゲートリフターやウイングも作動させることができません。そんな時はメーターパネルの警告灯が点灯します。バッテリーランプが点灯していれば、バッテリー関連の異常や、バッテリーの電量が不十分になった場合などが考えられますので対応してください。
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バッテリー上がりの主要な原因
バッテリー上がりの主な原因はいくつかありますが、近年では安全を目指し高度化したキャビン内の電気機器類の強化や、働き方改革などにともなう積載を支援する装置などで電力使用量は年々増えています。そのため、思わぬバッテリー上がりを起こしてしまうトラブルが少なくありません。
ライトのつけっ放しのような、古典的ともいえる一般的なバッテリー上がりから、新たな原因まで考えられる時代になったのでしょう。それらを知っておくことで、バッテリー上がりを未然に防ぐことが可能になります。
・ライトの消し忘れが引き起こすバッテリー上がり
バッテリー上がりの最大の原因はライトの消し忘れです。ヘッドライトや室内灯などライト類の消し忘れに過度に気をつかうドライバーは少なくありません。たかがヘッドライトや室内灯と思いがちですが、数時間でバッテリーを上げてしまうほど電力を消費しているのです。
エンジンの駆動中にはオルタネーターの発電によってバッテリーが充電されますが、エンジンオフ状態でバッテリーの電力のみを頼り、室内灯ばかりかスマホを充電し、オーディオ機器を使いながらゲームも行うことがあれば、バッテリー上がりまっしぐらです。特に夜間休憩中の室内灯使用には気をつけてください。
・エアコン、オーディオの過度な使用
夏期や冬期のエアコン使用は電力を大量に消費します。走行時のようにオルタネーターによって充電される状態が続けばよいのですが、トラックドライバーにはどうしてもドライバーの都合だけでは決めることができない待ち時間が生まれてしまいます。
暑い夏の積み降ろし時に汗を多量に流したあとの休憩や、事務仕事のためにエアコンのスイッチを切ることなくキャビンの中はよく冷やしておきたいものです。そして、休憩中にはオーディオで好きな音楽でも聴きたいものです。
環境保全のためにアイドリングストップが強く言われる中で、特に気をつけなければならないことだと理解していても、なかなか理想どおりにはいかないでしょう。しかし、エンジンを停止した状態でのエアコン使用はバッテリー消費を上げてしまうことをよくご理解ください。
・長時間の放電による充電不足
バッテリーの長時間放電は、長期間トラックに乗らない場合に起こります。バッテリーに自然放電があることが原因です。
通常バッテリーはオルタネーターによって充電されるので放電や充電不足の心配はありません。バッテリーのより良い健康状態を保つためにトラックの駐車場所などさまざまな条件や環境を考えてください。バッテリーばかりかその他の部品にも悪影響を与えるので、屋外で長期間トラックを放置することはお勧めできません。
・冬にバッテリーが上がりやすい原因
冬にバッテリーが上がりやすい原因はバッテリーが低温に弱いからです。バッテリー内のバッテリー液である希硫酸は温度が下がると性能が落ちてしまいます。その能力は新品であっても、外気温が0度で約80%まで落ちてしまい、真冬の北海道のような厳寒地で、マイナス20度まで気温が下がれば50%まで能力が落ちてしまうのです。
使い古したバッテリーであればもっと能力は落ちてしまいます。冬期には屋内に駐車するなどの対策が必要です。
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バッテリーが上がるのを未然に防ぐ方法
まったくトラックを使用せずにそのまま放置していても、バッテリーの状態がよければ、一般的には1ヶ月程度の間であれば、エンジンがかかる可能性は高いです。しかし、これまでお伝えしたようにバッテリー上がりが起きる主な原因がいくつかあります。それらに対応できればバッテリー上がりは未然に防ぐことができます。
トラックから降車する際には、オーディオや通信機器の電源OFF、ヘッドライト類、ルームランプの消灯を確認して、半ドアに気をつけてください。仕方なく長期間駐車される時には、電源を外してバッテリーが電装品に通電しない状態を保ってください。
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バッテリー上がってしまった場合の対処法
バッテリーが上がってしまうと、たいていの人は焦ってしまい、やってはならないことをしてしまうものです。ここからは、バッテリーが上がってしまった場合の対処法を説明しますが、その前にやってはいけないことを、いくつかお伝えします。
まずは、焦って何度もエンジンをかけることはしないでください。バッテリーの電力を消費してしまい、バッテリーに負担をかけてしまいます。
そして、バッテリー上がりを長時間放置しないでください。電圧が低下した状態から自然放電によって電圧は低下し、バッテリーの劣化を招き、最悪の場合交換しなければならなくなってしまいます。
・救援車を利用したジャンプスタートの手順と注意点
バッテリーが上がってしまった場合の対処法で一般的な方法が、救援車を利用したジャンプスタートでのバッテリー充電です。ジャンプスタートは救援車に来てもらい、その車両から電気を分けてもらう対処法です。乗用車の12Vバッテリーからは充電できませんので、必ずトラックに来てもらいます。同格の24Vバッテリーなのでブースターケーブルが用意できれば救援車から充電することができます。
まずはブースターケーブルに異常がないことを確認してください。ケーブルの断線やケーブルカバーの破れがないこと、バッテリー端子を挟むクリップにがたつきがないかを確認してください。感電防止の手袋を着用して作業に備えることが必須です。
充電を受けるトラックはエンジンを切って、ギアをパーキングに入れます。ブースターケーブルとバッテリーのつなぎ方さえ間違えなければ大丈夫です。
赤のケーブルをバッテリーが上がっているトラックのプラス端子につなぎ、その反対側を救援車のプラス端子につなぎます。そして黒のケーブルを救援車のマイナス端子につなぎ、最後にバッテリーが上がったトラックのエンジンの金属部分につないでください。
完了したら救援車のエンジンを始動します。ギアはニュートラルでアクセルを踏み込んでエンジン回転数を上げ一定の回転数を保ってください。この間に充電されています。救援車のエンジン回転数はそのままで、バッテリーが上がったトラックのエンジンを始動させます。始動したらエンジンが止まらないように様子を見ながらトラックからの充電を続けます。エンジンが動いていれば、ジャンプスタートは成功したので、ブースターケーブルを外してください。外す時は取付けた時と逆の順番です。
バッテリーへの満タン充電は終わっていないので、そのまま30分ほどトラックを走行させてバッテリーに十分な蓄電を行ってください。 s
・応急処置としてのブースターケーブル使用法
ブースターケーブルさえあれば、救援車を呼ぶことができなくても、通りかかったトラックに手を挙げて合図すれば、たいていのトラックは止まってくれます。トラックドライバー同士の仲間意識はありがたく、嬉しいものです。
運悪くブースターケーブルを積んでいなくても、ブースターケーブルを貸してもらえる可能性も十分あります。しかし、そんな優しい仲間たちが1台も走らない場所でバッテリー上がりを起こしてしまうこともあるかもしれません。そのような場合には、携帯用充電器であるジャンプスターターがあれば、バッテリー上がりを対処できます。
トラックのバッテリー充電には24V用のジャンプスターターが必要になります。ジャンピングスタートと同様に、バッテリー上がりを起こしたトラックはエンジンを切って、ギアはパーキングに入れてください。ジャンプスターターのケーブルもカバーに破れがないか、端子を挟むクリップにがたつきがないかを確認してください。そして必ず感電防止用に手袋を使ってください。
手順はジャンピングスタートと同様です。ジャンプスターターとバッテリーのつなぎ方を間違えずにプラスとプラス、マイナスとマイナスでつなげることができれば対処できます。ジャンプスターターでの充電は成功したら、ブースターケーブルを外してください。取付けた時と逆の順番で外せば大丈夫です。そのまま30分ほどトラックを走行させてバッテリーへ十分な蓄電を行なってください。
・ロードサービスの利用方法
土地勘のない初めての場所でバッテリーが上がり、救援車を呼べず、ジャンプスターターも持たず対応のしようがない場合もあるかもしれません。もしくは危険を伴うこともあるジャンピングスタートやジャンプスターターを苦手に感じる方もいらっしゃるかもしれません。そのような場合には、ロードサービスを利用する対処法もあります。
ロードサービスでは一般的にJAF(日本自動車連盟)がよく知られています。しかしJAFは乗用車専用のロードサービスを中心に行っているのでご注意ください。JAFではロードサービス対象車種を車両重量3,000kg以下(最大積載量2,000kg以下)の自動車としています。車両重量3,000kg(最大積載量2,000kg)を越えるトラックやバスには「燃料切れ」「キーの閉じこみ」のみに対応しています。
ちなみに、ロード・ローラ、タイヤ・ローラ、農耕作業用自動車、ロータリ除雪車などの大型特殊自動車や、小型特殊自動車も対象外の車種としていることを知っておくと便利かもしれません。では、どうやったらロードサービスを利用できるのでしょうか。
一つの方法はご自身で加入している自動車保険(任意保険)です。保険によってはロードサービスの利用が付帯されている場合がありますので、ご自身の自動車保険の内容をよく確認してみてください。もしあれば、提携先のロードサービスをご利用ください。
運送事業者によるトラック事業のための共済組合である『交通共済協同組合』でも、このロードサービスの受付を行っています。「トラック交通共済ロードサービス」制度として全国での対応を行っています。交通共済協同組合は中小企業等協同組合法によって設立されています。日本全国の地域ごとに組合があり、零細・中小の運送業者のために自動車共済、自賠責共済、労働災害共済、事故防止、労働保険事務組合を行っています。
車両トラブルが生じた際の応急処置や、レッカー移動等のロードサービスも提供しています。そして、搬送引取費用特約でロードサービスを行っています。組合の営業時間にかかわらず、24時間365日提供されているロードサービスです。
契約に基づき、トラックが事故または故障により走行不能となった場合に、30分程度で完了する応急処置を行ってくれます。その応急処置にはバッテリ―が上がってしまった時のジャンピングも含まれています。その他の対象となる主な応急処置には「キーの閉じ込み時のドア解錠」「脱輪時の路面への引上げ」「パンク時のスペアタイヤ交換」が含まれています。すべてはフリーのサービスではなく、後日対応したロードサービス会社への支払いが待っていますが、全国どの地でも対応してくれることは、日本中を走り回るトラックドライバーの大きな安心につながります。
ロードサービスには応急処置で復旧することのできないトラックを最寄りの修理工場に搬送するサービスも含まれていますので、一度確認してみてはいかがでしょう。
・バッテリーを交換する
バッテリー上がりの原因が経年劣化等によるものであると判明すれば、バッテリーを交換しなければなりません。整備工場でプロの整備士による交換が安心ですが、自身でできない作業ではありません。トラックのことを知るためにもバッテリーの交換方法を憶えて損はありません。
まずは、使用しているものと同サイズのバッテリーを2個と、10mm (ターミナルの種類によっては12mmもしくは13mm)のボックスレンチもしくはスパナ、軍手を用意してください。
交換の手順はまずトラック側のマイナス端子を外してください。そして、マイナス端子の反対側にあるトラック側のプラス端子を外してください。続いて、バッテリー同士で繋がっているマイナス端子を外し、プラス端子も外してください。これでバッテリーは外せる状態になりました。ここでバッテリーを外したら、新しいバッテリーを据え付けて、外した時と逆の順番で各端子に各プラグをつないでいきます。
最後に取り外したバッテリー同士で繋がっていた端子を新しいバッテリーのプラス端子につなげることから始めます。高電圧のバッテリーですのでプラスとマイナスを接触させたり、工具や配線が他の場所に触れないように十分注意して交換作業を行ってください。
バッテリーの配線を外す時はマイナスから、取付けにはプラスから行うことを鉄則として覚えておけば、事故を起こすことはないでしょう。
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まとめ
バッテリーがなければトラックのエンジンは始動せず、バッテリーの電力がなければまったく動かない電子装備や後付けの電装品が満載されたトラックです。バッテリーはトラックに不可欠で大切な部品であると再認識いただき、これからも大切にバッテリーを取り扱っていただきたいです。
あってはならないトラックのバッテリー上がりですが、万が一の時にはこの『豆知識』を思い出して対処してください。
トラックファイブは『豆知識』でこれからも皆様にさまざまな情報をお届けします。
