トランスミッションの構造や種類、故障時の対処法をわかりやすく解説!
目次
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はじめに
トランスミッションは、エンジンからの動力を車軸に伝える部品です。走行条件に合わせて適切なトルクや回転数に変えています。
今回の『豆知識』は、トランスミッションの役割、構造、各種の特徴、故障のサインとその対処法についてわかりやすく解説します。
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トランスミッションとは?
トランスミッションとは、速度や負荷に応じてギアを調整して、エンジンの出力を効率的に駆動輪に伝える変速機のことです。
トラックをはじめ、どの車両も相当な重量があり、その車体を動かそうとすれば回す力(トルク)が必要です。そして、この始動時の力(トルク)を生み出すために、エンジンの出力をトランスミッションで大きなものに変えています。トランスミッションを介さずエンジンの力を直接車軸(車輪)に伝えても回転させるだけの力がないので、エンストを起こしてしまいます。
トランスミッションはエンジン出力軸の回転力を、ギアの組み合わせを使って変えることでトルクを大きくし、車両は力強く発進させます。しかし、そのまま走行していたら、いつまでもスピードは上がらず出力の上がったエンジンは焼き付いてしまいます。車両は慣性の法則で動き出すと、始動時ほどのトルクは必要なくなりますが、車軸(車輪)の回転数を上げていかなければなりません。その回転速度とトルクを変えるのもトランスミッションの役目なのです。
トランスミッションはエンジンの出力を負担なく車軸に伝えて、重量のあるトラックをスムーズに走行させているのです。
トランスミッションの仕組み・構造
トランスミッションはいくつかの部品で構成され組み立てられています。原動力となるエンジンの力を、ギア(歯車)をはじめとする構成部品で車軸、タイヤに伝えて車両を動かす役目を果たしています。
・ギア
ギア(歯車)の歴史は古く、紀元前にはすでに考案されていたようです。ギアはその組み合わせによって、小さな力を大きくしたり、大きな力を小さくしたりすることができます。その歯形の違いを活用して力の方向を変えることもできます。多くのギアが配備されたトランスミッションはギアボックスとも呼ばれます。
ギアは自動車においてトランスミッションだけではなく、ディフェレンシャルやステアリング、ウォーターポンプ、オルタネーターなどさまざまな装置を駆動させています。
・クラッチ
エンジンとトランスミッションの間にあり、発進や停止、変速時にエンジンの力をタイヤに伝えたり遮断したりするのがクラッチです。クラッチにはいくつか種類があります。
その中でも摩擦クラッチはマニュアルトランスミッション(MT)に採用されています。2枚の円板の摩擦力によって動力を伝える仕組みです。2枚の円板を切り離し、トランスミッション内のギアの組み替えを手動で行います。
一方、流体クラッチは液体で満たされた2枚の回転翼のうち片方を回して液体の流れを作り、反対側の回転翼も回す仕組みです。オートマチックトランスミッション(AT)車に多く搭載されています。
・シンクロナイザー
シンクロナイザーはトランスミッション内でギアの組み替えをスムーズに行うための機構です。回転数の違うギア同士をそのまま繋げると、ギア同士がぶつかり合ってギアが入らず車両に大きな負担を与えます。シンクロナイザーはエンジンと車軸の回転数を調整しギアをスムーズに組み合わせるのです。
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トランスミッションの種類
トランスミッションには複数の種類があり、変速が手動か自動かによってマニュアルトランスミッション(MT)とオートマチックトランスミッション(AT)とに分かれています。各トランスミッションには向き不向き、得意不得意があります。
・マニュアルトランスミッション(MT)
マニュアルトランスミッションは、手動変速機(英語のManual Transmission)です。ドライバーがギア(減速比)を選んで操作します。熟練のトラックドライバーにはタイムリーでスムーズな変速が可能で、重量のあるトラックの多くはこのマニュアルトランスミッション(MT)が採用されています。
・オートマチックトランスミッション(AT)
オートマチックトランスミッションは、自動変速機(英語のAutomatic Transmission)です。エンジンの回転速度やスピードに対応して自動的に変速比を変えることができます。乗用車ではその容易さから多くの車両がオートマ対応で、普通自動車運転免許の「AT限定」が普及しています。
運送業界の人手不足に対応して、AT限定普通免許でも運転が可能な小型トラックが登場しています。
・セミオートマチックトランスミッション(セミAT)
セミオートマチックトランスミッションはMTとATの良いところを合わせたトランスミッションです。MTの操作の一部分が自動化されています。ドライバーに優しいセミATは各メーカーからトラック・バスに搭載して発売されています。
セミATは各社によってその名称が違います。日野自動車:Pro Shift、三菱ふそうトラック・バス:INOMAT、UDトラックス:ESCOT、いすゞ自動車:スムーサーなどです。
・コンティニュアス・ヴァリアブル・トランスミッション(CVT)
コンティニュアス・ヴァリアブル・トランスミッションは無段変速機あるいは連続可変トランスミッションです。英語の(Continuously Variable Transmission)で、ATの仲間と言えます。
ギアがなく、ベルトやチェーンを通じて2つの滑車(プーリー)の幅を変えながら動力を伝えます。ギアで変速する一般的なトランスミッションと比べるとスムーズに加速し走行できるのが特徴です。しかし、ハイパワーエンジンには対応できておらず、安価に製造できることもあって、軽自動車で多く採用されています。
・デュアルクラッチトランスミッション(DCT)
デュアルクラッチトランスミッションは有段自動変速機、ATの仲間です。2系統のギアがあり、自動制御でそれぞれのクラッチを備えていますが、クラッチ操作が不要でスムーズな走行を実現しています。
トランスミッションの故障やトラブルのサインと対処法
トランスミッションの警告灯が点灯した場合に考えられる理由と、その時の対処法をお伝えします。
・警告灯が点灯している
ギアマークの真ん中に「!」の警告灯がトランスミッションの異常を知らせる警告灯です。ATの電子制御システムに異常があるときに点灯します。MT車には装備されていません。
急停車や急加速をしないようにして、ディーラーや整備工場などに持ち込む方法を考えてください。
・変速時に違和感があり、加速がしづらい
変速時に違和感があり、加速がしづらい場合の多くはトランスミッションでの異常が予想されます。そのような場合、ドライバーが原因の追究や修理をすることはできません。トラブル発生を前提として、車両をなるべく早く安全な場所に停車させて、ディーラーや整備工場に連絡して指示を仰いでください。
・異臭や液漏れが見られる
異臭や液漏れが見られる場合は、トランスミッション内のギアの潤滑剤であるミッションオイルが何らかの原因で漏れ出している可能性があります。そのオイルがなくなってしまうと、ギアが直接噛み合い摩擦熱で高温になって異臭を発生させます。
トランスミッションの破損にもつながる危険な状態ですので、なるべく早く側道や広い場所などに停車してディーラーや整備工場に連絡して対応策を考えるようにしてください。
・変速時に異音や振動がする
トランスミッションから異音や振動がする場合には、その多くがミッション内部に損傷などを起こしている可能性があります。そのまま走行できなくなるケースも十分考えられます。
無理に走行すれば、さらに重いトラブルを引き起こす可能性もありますから、変速時に異音や振動を感じた場合には無理に走行を続けないで側道や広い場所などに停車してディーラーや整備工場に連絡をしてください。
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トランスミッションに関するQ&A
よくあるトランスミッションに関するQ&Aです。参考にしていただければ幸いです。
・トラックのオートマが故障した場合、どう対処すればよいですか?
トラックに限らずオートマのシステムに不具合、故障を起こしてしまった場合には、プロの整備士でなければ対応できないでしょう。まずはあわてずに安全な場所に停車して、ディーラーや整備工場に連絡して指示を仰ぎましょう。
・CVTはクラッチが滑りやすいですか?
クラッチ滑りは、アクセルペダルを踏んでも上がるのはエンジンの回転だけといった状態のことです。CVTのクラッチ滑りは潤滑油であるCVTフルードの経年劣化が原因になります。経年劣化は潤滑性能や粘度・温度特性を失うだけではありません。トランスミッション内部にスラッジを溜めてしまいます。スラッジは性能低下を引き起こし、CVT内部のスターティングクラッチ板の表面に汚れとなって付着してしまいます。
これが原因となってクラッチ滑りになってしまいます。
まとめ
トランスミッションはエンジンの力を車軸に伝える非常に重要な役割を担った装置です。安全・安心にお客様の荷を運ぶトラック輸送であってならないトランスミッションのトラブルを防ぐためにも、定期点検は大事にしてください。
みなさまのこの先の安全走行を心より祈念いたします。
トラックファイブは『豆知識』でこれからも皆さまにさまざまな情報をお届けします。
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