総合力ではディーゼルエンジンのほうが上! その仕組みと構造は?
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はじめに
商用車両や、建設車両のエンジンの多くはディーゼルです。『パワー』『持久性』『経済性』というトラックに不可欠な三大要素を持つディーゼルエンジンは、総合力でガソリンエンジンを抑えてさまざまな車両に採用されています。
今回の『豆知識』はこのディーゼルエンジンの詳細を取り上げました。仕組みや構造、ディーゼルエンジンを用いることでのメリット・デメリットを紹介しますので、今後の参考にしていただければ幸いです。
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ディーゼルエンジンとは?仕組みや構造、メリット・デメリットを解説
ディーゼルエンジンの作動の仕組みは、ガソリンエンジンと同じ4行程(4ストローク・サイクル)で組み立てられています。
① 空気の取り込み(吸入)
ディーゼルエンジンの作動行程です。まずは燃焼のために外気をエンジン内に取り込みます。ピストンリングが上死点(最上昇の地点)に上がったタイミングで吸入バルブが開き、ピストンはそのまま下がって空気を取り込みます。
② 空気を圧縮(圧縮)
吸入バルブを閉じて下死点(最下降の地点)に位置していたピストンは、上昇して一気に空気を圧縮します。そして1/20前後に圧縮された空気は600度以上の高温になります。
③ 空気と一緒に燃料が燃焼(膨張)
1/20前後に圧縮され、600度以上の高温になった空気に燃料である軽油を噴射するのです。100気圧以上の高圧燃料は一気に噴射され、高温になったピストン内で自然発火して爆発・燃焼、その膨張力によってピストンを押し下げます。
④ ガスを排気
ピストン内で爆発・燃焼して下死点(最下降の地点)まで下がった時点で排気バルブが開きます。
そしてピストンが下死点から上死点に向かって上がっていく際に爆発・燃焼で生まれたガスを排気バルブから押し出すのです。
そして、ディーゼルエンジンの特徴は、ガソリンエンジンとは違いスパークリングプラグがないことです。高圧縮した高温の空気で噴霧した燃料に自己着火し爆発・膨張させるのです。
ディーゼルエンジンのメリット
ディーゼルエンジンにはガソリンエンジンにないメリットがあります。
・燃費が優れている
ディーゼルエンジンはガソリンエンジンのように、スパークプラグの力で燃料発火を行う構造にはなっていません。ガソリンエンジンとは違い高圧の空気をシリンダー内に送り込み、燃料の自然発火によって爆発させます。
ガソリンエンジンより多くの空気を圧縮して爆発に使うため、ディーゼルエンジンのほうが熱効率は高くなり熱エネルギーを多くの動力に変えます。また、燃料効率が高く、燃費が良いことにもつながります。それがディーゼルエンジンの特徴の一つになるのです。
・燃料代が安価
ディーゼルエンジンには軽油を燃料とするメリットもあります。ガソリンとは違い、軽油は引火点が低いことから火災につながる危険性が低いです。そしてなによりも、燃料代金が安いことが大きなメリットです。
2024年11月現在、ガソリン(レギュラー)174円に対して軽油は154円と、20円ほど安くなっています。
・パワフルでスムーズな加速性能
ディーゼルエンジンの一番のメリットはその力強さです。内燃機関のなかではガソリンエンジンを抜いて一番熱効率が高く、また圧縮率も高いので爆発圧力が強いのです。そのため力強く、重量のあるトラックでも加速がよいです。
エンジンを頑丈にして耐久性の高いものにしないとなりませんが、そのぶんエンジンは丈夫になって故障が起きにくくなることがメリットにもなります。
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ディーゼルエンジンのデメリット
ディーゼルエンジンのメリットを生むその構造は、ガソリンエンジンと比較するとデメリットも生み出しています。
・価格が高い
ガソリンエンジンと比較すると、ディーゼルの爆発力を動力に活かすためにエンジンの各部を頑強に作る必要があり、エンジンは大きく重くなるため製造コストが高く、製品価格も高くなってしまいます。
トラックの車体価格を上げてしまうエンジン製造コストの高さが、ディーゼルエンジンのデメリットとなります。
・メンテナンスコストが高い
車体価格ばかりかメンテナンスコストも高くなるのがディーゼルエンジンのデメリットです。エンジンオイルはガソリン車よりも短い距離・時期で交換しなければなりません。
DPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)の交換もコスト高にカウントされてしまいます。
・振動や騒音が気になることがある
価格が高くなりますが、クリーンディーゼル車も登場してディーゼル車の振動や騒音が少なくなっていますが、ガソリン車と比べると振動や騒音が気になることがあります。そして、ディーゼルエンジンにまだ排出ガス規制がなかった頃の光化学スモッグの一因にもなった排ガス公害の悪いイメージが残っていることもデメリットの一つです。
しかし、最新のディーゼルエンジンは改良が重ねられてガソリン車と遜色のないものになっています。
ディーゼルエンジンの寿命
ディーゼルエンジンは構造がシンプルで頑丈なため、寿命は長いです。ガソリンエンジンのようなスパークプラグはなく発火させるために高い圧縮率の負荷がかかるため、それに耐えるよう頑丈に作られています。そんなディーゼルエンジンですが、さらに長持ちさせるコツがあります。
まずはオイルの日常点検です。エンジンに付属するオイルゲージを引き抜き、きれいにふき取りオイルの色を見て汚れを確認してください。その時にオイル残量の確認も必要です。
オイルは冷却・潤滑・気密・防錆など多くの役割を果たしてエンジンの稼働を支えています。古くなったオイルや残量の少なくなったオイルはエンジンが焼け付いて大きな負担をかけるばかりではありません。最悪の場合、発火し火災などの大きな事故につながる場合もあります。
オイル交換時期の目安となる走行距離は、小型トラックで1~2万キロ、中型トラックで1.5~2万キロ、大型トラックでは2~4万キロとなります。走行時間では1年とされますが、トラックの使用状況・走行距離によって一概に1年とは言えません。日常点検によって計画的にオイル交換を実施して良好な燃費を確保することはエンジンの健康状態を良好に保ち、経済走行につなげることができます。
そしてDPFの交換を定期的に行い、日常点検によるバッテリーチェックやラジエーターメンテナンス、冷却水点検などもディーゼルエンジンの寿命を長持ちさせるコツになります。
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ガソリン車とディーゼル車の違い
ガソリン車とディーゼル車の大きな違いは使用する燃料とエンジンを駆動させる仕組みである着火方法です。ガソリン車とディーゼル車の違いを一覧表にまとめてみました。
比較項目 | ディーゼル車 | ガソリン車 |
燃料 | 軽油 | ガソリン |
燃費 | ガソリン車より燃費がよい | ディーゼル車より燃費が悪い |
維持費 | 燃料費が安い | 燃料費が高い |
メンテナンス費が高い | メンテナンス費が安い | |
走行性能(トルク) | 低速でも強いパワー | 高速走行時の加速が安定 |
車体価格 | 高い | ディーゼル車より安い |
着火方式 | 圧縮熱で自然着火 | スパークプラグで着火 |
エンジン | 発火しやすい | 発火しにくい |
クリーンディーゼル車とディーゼル車の違い
クリーンディーゼル車は従来のディーゼルと違い、燃料である軽油を電子制御して噴射することによって完全燃焼に近づけました。
クリーンディーゼル車とディーゼル車の違いを一覧表にまとめてみました。
比較項目 | クリーンディーゼル車 | ディーゼル車 |
排気ガス | ディーゼル車より改良された | ススの発生あり |
騒音(エンジン音等) | 軽減された | ピストンの振動音あり |
振動 | 軽減された | ピストンの振動あり |
車両価格 | 高い | 安い |
クリーンディーゼルを導入しているメーカー・車種
トラックメーカー各社ともクリーンディーゼルエンジンを、小型トラックを中心に導入しています。
UDトラックスでは、もともと火力発電所などの排気ガス処理に利用されていた尿素SCRシステムと呼ばれる排気ガスの浄化技術を導入しています。クリーンディーゼルシステムにもこのシステムを採用しました。
トラックでは世界初の採用となった尿素SCRシステムをUDトラックスは独自に「FLENDS(フレンズ)」として開発し、コンドルに搭載しています。
日野自動車はデュトロのハイブリッドシステム専用クリーンディーゼルエンジンで低燃費を実現しました。ハイブリッド専用クリーンディーゼルエンジンN04C-WEとHEVモーターの間にクラッチを設置し、運転に応じてクラッチを制御してエネルギーを効率よく利用しています。
画期的な燃費の向上を図り、平成27年度燃費基準+15%を達成した12.65㎞/Lを公表しています。燃費の向上ばかりか、排出ガスの後処理ではDPR-Ⅱ(トヨタの商標)を搭載し、尿素フリーを実現しています。
トヨタでは、トヨエースにDPR(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)を新採用しています。トヨタのクリーンディーゼルテクノロジーD-CATをコンセプトに、4.0Lディーゼルターボエンジン(N04C-TB、N04C-TD)と、PMを画期的に低減する新開発触媒を組み合わせたシステムです。
マツダのタイタンは新しい時代の環境基準への適合を目指しています。最先端のクリーンディーゼルである4JZ1型エンジン(4JZ1エンジン-TCSエンジン、4JZ1エンジン-TCHエンジン)を搭載し、尿素SCRと合わせることによって「平成28年排出ガス規制」に適合しています。幅広いシーンで活躍する小型トラック「タイタン」は、安全性能や燃費性能向上への努力ばかりか、環境基準への適合にも力を入れています。
まとめ
従来のディーゼルエンジンとは違う現在のディーゼルエンジンの特性を理解して、『パワー』『持久性』『経済性』というトラックに不可欠な三大要素を持つディーゼルエンジンと、これからも付き合っていってください。
トラックファイブは『豆知識』でこれからも皆様にさまざまな情報をお届けします。
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