特車(特殊車両)申請とは?審査の流れや違反行為を徹底解説!
今回は特車(特殊車両)申請を取り上げました。
正式には『特殊車両通行許可申請』、こう書けば自ずと意味は明確になっていくと思います。
私たち国民の税金で作られて保全されている公道を大切に使い、今の道路を私たちの子ども達のため、そして未来に残すために決められたルールです。
国道・県道・市町村道そして高速道と管轄の違う道路を特車で移動するためのルールや違反した際の厳しい罰則を解説します。
皆様の日々の業務の参考になれば幸いです。
目次
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特車(特殊車両)とは
トラック等の車両には、道路法車両制限令で定められた重量や寸法等のサイズがあります。
その具体的なルールを「一般的制限値」と言い、特殊車両とは「一般的制限値」を超えたサイズ・構造や運ぶ貨物が特殊な車両を言います。
『特殊』とは、日本の公道を作る際に定められている基準に収まらず、車両が通行できる制限基準を越えてしまっているということを指しているのです。
・重さ指定道路と高さ指定道路
一般的制限値よりも緩いルールが指定された道路です。
一般的制限値で指定されている重さ20t、高さ3.8mを越えて、高速道路や一般国道、県道、市町村道において道路管理者が指定することによって「重さ指定道路」と「高さ指定道路」として制限値を超えて走行することが出来ます。
具体的な数値です。
重さ指定道路:車両総重量20t→25tへ緩和
高さ指定道路:車両高さ3.8m→4.1mへ緩和
・特車(特殊車両)の具体例
一般的制限値を超えた車両です。
橋梁の部材などの特殊建設物の部材を積んで車両総重量20tを越えて重さ指定道路以外を走行するトラック。
ロケットのような特殊貨物を積み全長12mを越えるトレーラーなどがその具体例です。
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特車(特殊車両)に関連する法令等は何がある?
道路の保全・維持のためだけがこの特車を定める目的ではありません。
そこには私たち国民の安全な生活を守るという大きな目的もあります。
それらのために定められている特車(特殊車両)に関連する各法令等をご紹介します。
1:車両制限令(道路法)
道路法における車両制限令です。
特殊車両通行許可制度に関する法令です。
管 轄 | 国土交通省道路局(旧建設省)
窓口は各地方整備局になります |
概 要 | 道路を一般制限値を超える車両で走行する際にはこの車両制限令に定められている特殊車両通行許可申請を行って許可証を得る必要があります |
備 考 | 違反に対しては、指導や取締りがあります |
2:道路交通法
安全に道路を走行するための法律です。
管 轄
|
警察庁
窓口は警視庁、各道府警警察となります |
概 要 | 道路交通法で定められた積載基準(はみ出した荷を積載して走行する場合など)を越える場合、特殊車両通行許可とは別に出発地の警察署に制限外許可申請を出して許可を受ける必要があります |
備 考 | 違反に対しては、運転者が罰せられます |
3:道路運送車両の保安基準(道路運送車両法)
車両の製造等に関する法令となります。
管 轄
|
国土交通省自動車局(旧運輸省)
窓口は各運輸局になります |
概 要 | 特殊な貨物の輸送のために一般制限値を越えるトレーラー等を製造する場合にはこの保安基準に定められた基準緩和認定を受ける必要があります |
備 考 | 違反に対しては、営業停止等の措置や、違反の具体的な内容や重大性によって異なる罰則が適用される可能性もあります。 |
4:各法令で定める基準等一覧
車両制限令
管轄:整備局 |
道路交通法
管轄:警察 |
道路運送車両の保安基準
管轄:運輸局 |
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長さ
|
・貨物積載状態で12m | ・車両の長さの10%を越えるはみだしを禁止
・他の車両を牽引する場合の全長25m |
・車両の全長(車長)12m
・連結車の特例 セミトレーラーの連結車は連結装置中心から車両後端までの距離が12m トラクタ―は車長12m |
幅 | ・貨物積載状態で2.5m | ・貨物の幅は車両の幅を超えてはならない | ・貨物に関係無く2.5m |
高さ | ・貨物積載状態で3.8m
(高さ指定道路は4.1m) |
・貨物積載状態で3.8m
(高さ指定道路は4.1m) |
・高さ3.8m |
総重量 |
① 車両の重量(自重)+
乗員の体重(55㎏/人)+最大積載量 ・高速道路、重さ指定道路は25tまで ・その他道路は一律20t ② 連結車の特例 バン型などのセミトレーラー、フルトレーラーは最遠軸距離に応じて ・重さ指定道路25~27t ・その他の道路24~27t |
①規定なし
「貨物の最大積載量は、保 安基準に準拠(車検証の記 載値)」 ③ 連結車の特例 規定なし |
①自重+乗車定員の体重(一人当たり55kg)+貨物の最大
積載量 ・車長や軸距によって20~25t ②連結車の特例 セミトレーラ(被けん引)は、連 結中心から最後軸中心までの 距離によって20~28t |
運行 | 特殊車両通行許可を受けた車両は運行できる。
また、緊急自動車や災害救助等を用務とする車両は車両制限令の適用外。 |
制限外許可および制限外けん引許可を受けた最大積載量を超える車両は運行できる。 | 保安基準の制限値を超える車両は認定をうければ基準緩和車両として運行できる。 |
特車申請(特殊車両通行許可申請)における審査の流れ
申請者 (運送事業者もしくは、発注者である荷主) |
申請窓口:道路管理者 (国道事務所・県道事務所・市町村) |
① 申請者(運送事業者もしくは、発注者である荷主)は車両の諸元、積載物の内容、通行の日時などを記載した申請書類を作成します。
② 申請窓口に提出します。
③ 道路管理者は審査を実施。(算定要領、道路情報便覧を利用)
④ 必要な条件を付して許可、理由を付して不許可、のどちらかで道路管理者は返事を行います。
・申請の受付窓口は?
申請の受付窓口は道路管理者です。
道路法の規定によって道路法の道路を管理する者を道路管理者といい、国土交通大臣、都道府県(知事)、市町村(長)のいずれかになります(道路法 第18条)。
実際にはその実務を行う国道事務所、土木事務所、市町村の道路管理課などになります。
複数の道路管理者の道路をまたがり通行する場合は国道・県道・市道(政令指定都市)のいずれかの道路管理者に申請すればよいのです。
政令指定都市ではない市道を通行する場合は別個に申請をしなければなりません。
・申請に必要な書類
特殊車両通行許可申請書、車両に関する説明書、通行経路表、申請車両数、自動車検査証の写し、車両内訳書が各1部必要です。
そして申請には普通申請と包括申請とがあります。
普通申請とは、申請車両台数が1台の申請をいいます。
包括申請とは、申請車両台数が2台以上の申請をいいます。
車種、通行経路、積載貨物および通行期間が同じものでなければならないというルールがあります。
・特車申請(特殊車両通行許可申請)の提出方法
特車申請の提出方法には2種類あります。
1つは道路管理者の窓口から直接提出する方法です。
もう1つはオンラインで提出する方法です。
オンライン申請の方が「特殊車両システム」を使いながらで、申請書は作りやすいでしょう。
窓口申請は担当者と直接やり取りしながら進めるので審査終了までの時間は短くなります。
この特車申請は代理人として行政書士を立てて、委任することも可能です。
窓口申請、オンライン申請のどちらでも可能です。
・オンライン申請について
オンライン申請はインターネットで行い、窓口まで申請に行く必要はありません。
自宅でもオフィスでも申請支援システムである「特殊車両システム」を使って申請できます。
会社情報、車両情報、経路図などの入力を行いますが、過去の申請データを利用することもできますのでずいぶん手間が省けると思います。
審査用に収録されている道路情報便覧に橋梁、交差点、道路幅員や最小曲線半径などがデータベースとして収録されています。
この道路情報便覧は毎年更新されますが、収録状況は高速道路・一般国道は100%、主要地方道は90%以上になっていますが、一般都道府県道は50%に満たず、市町村道は0%に近いのが現状です。
道路情報便覧に収録された道路は審査が早く、収録されていない未収録道路は審査に時間がかかってしまうのが一般的なようです。
・道路管理者をまたいだ申請(一括申請)について
道路管理者が違う道路をいくつも使って特殊車両が走行することは当然あります。
この場合、「一括申請」で申請を行うことができます。
国道・県道・市道(政令指定都市)であればこの3者のどの道路管理者の窓口に申請をしても構いません。
どれか1つで構いません。
政令指定都市以外の市、町・村には別個に出さなければなりません。
・申請にかかる費用はいくら?
申請にかかる費用は自分で申請する場合は手数料のみです。
手数料の金額は申請車両台数と申請経路数によって決まります。
(申請車両台数×申請経路数)×200円 の計算で申請費用は算出されます。
手数料は200円と、とても安いように思えますが、車両台数や経路数が増えると、やはりそれなりの費用になります。
そしてこの申請を行政書士に依頼すると、1例ですが特殊車両1台につき15,000円(5経路まで)ほどになります。
決して安い金額ではありません。
費用や時間的コストを考慮し、自身にとって負担の少ない申請方法を選びましょう。
・審査方法
① 道路別の算定
道路別に定められている算定要領を用い、各々の道路に対応した算定要領によって行います。
② 寸法・重量別の算定
申請書に基づき、寸法に関する算定と重量に関する算定をします。
③ 箇所別の算定
算定が必要となる箇所ごとに算定方法が決められています。
それに応じて算定します。
④ 車両別の算定
車両の区分によって、許可できる通行条件の範囲が決められています。
その範囲で算定します。
⑤算定要領を超える車両の算定(時間がかかります)
算定できる範囲を超える車両の場合は、別途算定方法が決められています。
この算定は、各道路管理者がその管理する道路を行なうことになっているため、受付した道路管理者が関係道路管理者と協議を行います。
⑥通行経路に係る道路が道路情報便覧に収録されていない場合(時間がかかります)
この場合も、“算定要領を超える車両の算定”と同様に、受付道路管理者が関係道路管理者と協議を行います。協議を受けた道路管理者は現地調査を実施し、その結果を用いて算定を行ないます。
・申請から許可・不許可までの標準処理期間は?
結果が許可ばかりではなく、不許可もあるこの申請の標準処理期間は定められています。
受付の日を起点にしての日数です。
新規申請及び変更申請の場合 3週間以内
更新申請の場合 2週間以内
下記条件を満たした場合です。
① 申請後に内容の変更がない。
② 道路情報便覧の未収録道路がない。
③ 特殊車両通行許可限度算定要領による許可寸法、重量を越えていない。
④ 個別審査がない。
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特車(特殊車両)通行許可に関する通行条件
道路管理者による審査の結果もしくは通行可能経路の確認の結果、通行することがやむを得ないと認められるときには、通行に必要な条件が付される場合があります。
この条件を通行条件といい、通行条件には次のようなものがあります。
記号 区分 | 内容 | 一般的条件 | |
重量に関する条件 | 寸法に関する条件 | ||
A | 特別な条件を付さない。 | 特別な条件を付さない。 | 普通に走行できる。 |
B | 徐行をすることを条件とする。 | 徐行をすることを条件とする。 | 徐行しての走行。 |
C | ①徐行をすること。
②他の車両との距離を確保することによって、通行する車線の一の径間を同時に通行する他の車両がない状態で通 行すること。 ③②のため、許可車両の後方に 1 台の誘導車を配置し通行すること。 |
①徐行をすること。
②対向車等との衝突、接触その他事故の危険を生じさせない状態で通行すること。 ③②のため、許可車両の前方に 1 台の誘導車を配置し、その連絡または合図を受けて通行すること。 |
徐行。
同一径間に他車がない状態で通行許可車両の後方に誘導車配置。 |
D | ①徐行をすること。
②他の車両との距離を確保することによって、通行する車線の一の径間を同時に通行する他の車両がない状態で通 行すること。 ③②のため、許可車両の後方に 1 台の誘導車を配置し通行すること。 ④隣接する車線の前方を十分に確認し、他の車両が隣接車線を通行しようとしているときは橋梁等への進入を控えることなどによって、可能な限り、隣接する車線における一の径間を同時に通行する他の車両がない状態で通行すること(すれ違い、追越し等によってやむを得ず他の車両が一の径間を通行することとなるときは一時停止すること。) |
徐行。 他の車両が同一径間の隣接車線にない状態で通行。
許可車両の後方に誘導車配置。 |
特車(特殊車両)通行許可制度における違反とは?
通行許可を受けての通行に遵守事項がいくつかあり、それを守らない場合、違反となります。
遵守事項は以下の通りです。
① 許可証または回答書の携帯(書面もしくは電子媒体で)
② 通行時間(指定されている場合)
③ 通行期間(許可・回答された期間のみ)
④ 通行条件(橋、トンネル内での徐行、誘導車の配置)
⑤ 通行経路(許可または回答された経路の通行)
⑥ 道路状況(必ず日本道路交通情報センター等に確認)
⑦ 事故のとき(通行中に交通事故を起こした場合は、直ちに警察へ通報。道路構造物等を損傷した場合は、速やかに道路管理者に通報。)
・どんな指導取締りが行われる?
道路の保全と交通安全のために道路管理者は管理する道路で取締りを実施しています。
基地取締りや自動重量計測装置によるWIM取締りがそれにあたります。
悪質な重量超過違反者の告発を行っています。
基地取締りの現場で基準(車両総重量の一般的制限値)の 2 倍以上の悪質な重量超過違反が確認された場合は、告発の対象となります。
なお、通行許可を受けた車両は、「基準× 2 +(許可総重量-基準)」が告発の対象となります。
・違反を繰り返し行った場合の措置は?
繰り返し特殊車両を違法に通行させた場合の措置は違反した運転手ばかりか、事業主にも適用されます。
取締基地における取締において警告を繰り返し受けた者、または自動計測装置(WIM)の計測結果において警告を受けた者は、国道事務所等において対面で「是正指導書」が手交
され、再び違反行為を行わないように是正しなければなりません。
その他には、特殊車両通行許可の取消しや、さらに悪質な時には告発にまで発展します。
・指導取締基地による取り締まりと行政指導の流れ
指導取締基地による取り締まりと行政指導の流れです。
車両制限令違反の1回目は警告とともに事業者あてに行政指導が行われます。
そして、2回目の違反時には警告と対面での行政指導である是正指導が行われます。
それでもなお3回目の違反があれば警告があり、弁明の機会が与えられます。
しかしここでの是正指導内容は国交省のホームページで公表されます。
4回目の車両制限令違反では許可は取り消され、告発、これも公表されます。
・車両重量自動計測装置による取り締まりと行政指導の流れ
車両重量自動計測装置による取り締まりと行政指導の流れです。
軸重20t超での違反が2回/1ヵ月、軸重20t以内での違反が20回/3ヵ月あった場合、警告と国道事務所において対面での行政指導である是正指導が行われます。
なお、この違反はトラックごとではなく事業者単位で取り締まられます。
この違反が回数を重ねると4回目の違反で警告があり、弁明の機会が与えられます。
しかしここでの是正指導内容は国交省のホームページで公表されます。
5回目の車両制限令違反では許可は取り消され、告発、これも公表されます。
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まとめ
私たちが生活をしていくなかで必要かつ重要なインフラストラクチャー。
そのなかの道路の重要性を考える機会になったのではないでしょうか。
私たちトラック事業者にとってなくてはならない道路です。
大切に使い私たちの生活の豊かさを守っていきたいですね。
『特殊車両通行許可申請』という言葉と生涯無縁だと思っていらっしゃる方もいるかも知れませんが、間接的に必ず関係しているのが私たち現代人なんだと、ご理解いただけたと思います。
道路は大切にしないといけませんね。
トラックファイブはこれからも『豆知識』で皆さまのお役に立つ情報をお伝えします。
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