トラックのエンジンとは?馬力などの性能指標、特長やメンテナンス方法まで徹底解説

日本の物流を支えているのはトラックです。

国内貨物輸送の9割以上をトラックが担っています。

重量のある大量の荷を輸送するトラックは頑強な車体、強力なグリップ力を持つタイヤ、そしてハイパワーを持つエンジンによって支えられています。

そのトラックのエンジン、エンジンの性能指標、そして特徴やメンテナンス方法の詳細までを今回の『豆知識』で解説させていただきます。

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トラックのエンジンについて

 

トラックのエンジンの多くはディーゼルエンジンです。

トラックに必要とされる『パワー』『持久力』『経済性』などを総合してガソリンエンジンではなくディーゼルエンジンが採用されています。

※ 出典:pixa bay

 

・トラックのエンジンはボディタイプによって変わる

輸送業界を中心に活躍するトラックはその他さまざまな産業界でその能力を発揮しています。

小型・中型・大型のボディサイズのみならず働く場所に特化したボディタイプによってもトラックのエンジンは変わります。

 

・トラックの種類 

トラックメーカーで製造されたトラックは専門の架装メーカーの架装によってさまざまなタイプのトラックとして事業主の手に渡ります。

 

〈平ボディ〉

トラックと言えば誰もがまず想像するトラックの代表選手である平ボディは左右・後方の三方のあおりだけのシンプルなトラックです。

さまざまな形状・大きさの積載物を運ぶことが可能なトラックです。

 

〈バンボディ〉

箱型とも呼ばれるバンボディには積み込みに特化したウイングボディや風雨に強く車両総重量を押さえる木製ボディやアルミボディがあります。

このバンボディには冷凍・冷蔵車両もありその機能を十分に活かす能力を備えたエンジンを搭載しています。

 

〈ダンプ車〉

建設車両でのトラック代表のダンプ車です。

大量の土砂を運び、運搬先に一度に降ろすためのダンプ機能には強力な力と十分な持久力を持つエンジンが搭載されています。

 

〈レッカー車〉

建設資材の揚重を行う特殊車量のレッカー車は自ら建設現場まで移動し、重量物の揚げ降ろしを行い、作業を終了すればまた自ら建設現場を後にします。

重い車体の自走に加え、揚重のために強いトルクのエンジンを備えたトラックです。

 

〈ミキサー車〉

ミキサー車無しでは建設作業は不可能です。

生コン工場で練られた生コンクリートを固化させずに建設現場まで運ぶミキサー車の絶えず止まることなくミキサーを回すのには持続力ある馬力を持つエンジンの力が必要です。

 

〈ポンプ車〉

ミキサー車とセットのようなこのポンプ車の存在を無くしてはコンクリート造の建物は作れません。

建設現場に運ばれた生コンクリートを強力なポンプにより圧送して地上より高い建設場所に送り込む強力なエンジンを持つトラックです。

 

・事業用のトラックの多くはディーゼルエンジンが使われている

輸送用の一般的なトラックも建設用などの特殊車両に分類されるトラックにも多くの場合ディーゼルエンジンが搭載されています。

さまざまなメリットを求め事業用のトラックの多くはディーゼルエンジンが使われています。

 

・エンジンの設置場所は

日本国内で製造されるトラックのほとんどはエンジンを運転室であるキャビンの下部に設置されています。

この主な理由は輸送を大きな目的とするトラックの最大積載量を最大限に確保するためです。

トラックの全長は最長12mと道路運送車両法で定められています。

エンジンをキャビン前に積んだボンネット型トラックではその分荷台部分の長さが短くなり積載量を減らすことになります。

そのために国内のトラックの多くはエンジンをキャビン下部に搭載しています。

 

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ディーゼルエンジンの特徴とは

運送・建設等で使われるトラックのエンジンに求められる強靭さや耐久性などを備えるのがディーゼルエンジンです。

 

・耐久性と長寿命

ディーゼルエンジンは輸送用の大型トラックや建設用の特殊車両などの大型かつ重量のある車体を動かせるだけのエネルギーを持つ内燃活動をエンジン内で起こしています。

ディーゼルエンジンはその内燃活動である爆発にじゅうぶん耐えうるだけの頑強な構造になっています。

そのため耐久性は極めて高く、その分寿命は長くなり100万キロを超えて走行するトラックも少なくありません。

 

・燃料効率の高さ

ディーゼルエンジンはガソリンエンジンのようにスパークプラグの力で燃料発火を行うのではありません。

ガソリンエンジンよりも高い圧力で空気を圧縮して燃料を自然発火によって爆発させます。

ガソリンエンジンより多くの空気を圧縮して爆発に使うためディーゼルエンジンの方が熱効率が高くなります。

高い熱効率は燃料の燃焼によって生まれる熱エネルギーを動力に多く変えているということで、燃料効率が高く、燃費が良いということにもつながります。

それがディーゼルエンジンの特徴の一つになるのです。

 

・トルクの高さ

ディーゼルエンジンはガソリンエンジンよりも高いトルク(回転力)を生み出しています。

輸送用の大型トラックや建設用の大型特殊車両などに一番必要となる粘りのある強い力がディーゼルエンジンの大きな特徴でもあります。

この高いトルクは重量物を積載した大型車両が低速でもスムーズに発進させることが出来たり、登坂をドライバーにストレスを感じさせずに走行させることが出来るのです。

 

・構造の簡単さ

ディーゼルエンジンとガソリンエンジンの大きな違いは気化させた燃料の発火方式です。

ディーゼルエンジンはガソリンエンジンのように発火のためにスパークプラグは使わずに高圧力による自己着火によって気化された燃料の爆発を起こしています。

スパークプラグが無いことで構造はシンプルになり、高圧力に耐えることが出来るように頑強に作られています。

この構造の簡単さもディーゼルエンジンの特徴の一つです。

 

・ブレーキ性能の高さ

車両重量に加えて積載物の重量で大型トラックや大型建設車両は停止するために通常のブレーキだけで急な減速や停車は出来ません。

そのためにディーゼルエンジンの仕組みを利用した排気ブレーキがあります。

強制的に排気を止めることによってエンジンの回転を弱くして減速させるのです。

ガソリンエンジンにはこの排気ブレーキはありません。

通常のブレーキだけではブレーキシューを減らしてしまうばかりです。

強力な性能の高い排気ブレーキもディーゼルエンジンの大きな特徴の一つです。

 

『豆知識』の過去記事においてトラックのブレーキについてもご紹介しています。

是非ご参考にしていただきたいと思います。

(過去記事)

『トラックは大きさによってブレーキが違う!ブレーキの種類と運転のコツ』

 

ディーゼルエンジンの仕組み

 

※ 出典:イラストAC

 

ディーゼルエンジンは燃料と空気の混合気を高圧で圧縮して自己着火によって燃焼させることで駆動に必要なエネルギーを発生させます。

エンジンはシリンダーとピストンからなり、吸気行程で空気を吸い込みます。

圧縮行程でピストンが上昇して混合気を高圧に圧縮します。

その後、燃料噴射装置から微細な燃料噴射が行われて燃料は高温・高圧の混合気中で自己着火し燃焼します。

この燃焼によって発生する高温・高圧のガスはピストンを下押ししてシリンダー内のエネルギーを回転運動に変換します。

この回転運動はクランクシャフトを介してトルクとして伝達され、車輪を駆動します。

排気行程では、排気バルブが開いて排気ガスが排出されます。

 

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軽油のメリット・デメリット

ディーゼルエンジンの特徴の一つとも言えるのが燃料にこの軽油を使用していることです。

その軽油のメリットとデメリットです。

※ 出典:pixa bay

 

・メリット

軽油を高圧力によって自己着火するためにガソリンと較べると高い熱効率を発生させて燃料を効率的に使います。

そのためディーゼルエンジンの燃費は向上します。

引火性が弱い安全性や、ガソリンより高い粘度から生まれるその潤滑性によりエンジン内部の部品同士の摩耗を防ぐなどのメリットを持っています。

ガソリンより価格が安いのも大きな特徴です。

 

・デメリット

軽油はガソリンよりも多くの硫黄を含んでいるため燃焼時により多くの硫黄酸化物や窒素酸化物を排出してしまいます。

これらの物質が大気汚染の原因となるデメリットを持ちます。

ディーゼルエンジンの着火方式の仕組みにもよるのですが、軽油の着火温度が高いために低温時や始動時には追加の暖房装置や始動装置が必要な場合もあります。

 

エンジンの基本性能に関する主な指標

エンジンの基本的な性能を表す主な指標がいくつかあります。

 

・トルク

トルク(Torque)はエンジンが回転軸に対して発生する回転力を表す指標です。

停止している重量のあるトラックをスムーズに走り出させるためにはこのトルクの大きさが必要です。

エンジンのトルクが大きいほど車両に対してより強力な推進力が生まれ、スタート時の出だしはよく、加速力は強くなります。

トルクはエンジンの回転数に応じて変化し一般的に低回転域から高回転域まで幅広い範囲で大きなトルクが発生するエンジンが好まれます。

 

・馬力

馬力(Horsepower)はエンジンの出力を表す指標であり、エンジンが単位時間あたりにどれだけの仕事をできるかを示します。

一般的に馬力が高いほどエンジンの出力が大きくなり、車両の加速や最高速度などの性能が向上します。

馬力はエンジンの回転数(rpm)とトルク(Torque)の関係で計算されます。

トルクは瞬発力であり、回転数は1分間の回転力です。

それをかけ合わせたものが馬力(持久力)であり、その単位はkw(キロワット)またはhp(ホースパワー)などで表示されます。

 

・燃費

燃費(Fuel Efficiency)はエンジンが燃料をどれだけ効率的に利用するかを示す指標です。

燃費が良いエンジンは同じ距離を走るためにより少ない燃料を消費して結果として燃料費の節約や環境への負荷を軽減するという大きな役割を果たします。

燃費はエンジンの設計や燃料噴射システム、排気システムなどの要素によって影響を受けます。

 

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トラックのエンジンは定期的な点検とメンテナンス

 

トラックの命ともいえるエンジンを健全な状態で保ち日々において安全走行するのには定期的な点検とメンテナンスが不可欠となります。

『豆知識』の過去記事において日常点検・定期点検・車検についてもご紹介しています。

是非ご参考にしていただきたいと思います。

(過去記事)

『トラックの車検は定期点検と同じ?車検時に交換する可能性が高い部品とは?』

(2023.04.07)

『日常・定期点検はトラックの不具合に気づくチャンス!状態のよいトラックは高く買い取られやすい!』

(2023.03.28)

 

・オイル交換

エンジンを正常に作動させるためにオイルの日常点検は必須です。

エンジンに付属するオイルゲージを引き抜き、きれいにふき取りオイルの色を見て汚れを確認してください。

あわせてオイル残量の確認も必要です。

オイルは冷却・潤滑・気密・防錆など多くの役割を果たしてエンジンの稼働を支えています。

古くなったオイルや残量の少なくなった場合はエンジンが焼け付いて大きな負担をかけるばかりではありません。

最悪の場合、発火し火災などの大きな事故につながる場合もあります。

オイル交換時期の目安の走行距離は小型トラックで1~2万キロ、中型トラックで1.5~2万キロ、大型トラックでは2~4万キロとなります。

走行時間では車検期間となる1年とされますが、トラックの使用状況・走行時間によって一概に1年とは言えませんので日常点検によって計画的にオイル交換を実施して良好な燃費を確保することはエンジンの健康状態を良好に保ち、経済走行につなげることとなります。

 

・バッテリーチェック

バッテリーが上がってしまえばエンジンの始動すらもできません。

バッテリーの点検は目視によってバッテリー液の量を確認し、バッテリーチェッカーを使って電圧を確認します。

バッテリー能力は冬期に気温が下がることによってバッテリー液の温度が下がってしまい能力が落ちる場合があります。

そのため冬期や寒冷地に向かう輸送トラックは特に念入りに出発前にバッテリーチェックが必要になります。

 

・ラジエーターメンテナンス

ラジエーターはエンジンから発生する高熱を吸収し、冷却液を循環させて熱を放散する役割を果たします。

エンジンからの熱を冷却液が吸収すると、ラジエーター内部のフィンなどによって放熱が行われます。

これによりエンジンの適切な動作温度を維持し、オーバーヒートを防ぎます。

点検にはまずエンジンを停止して冷やさなければなりません。

高温の冷却液や蒸気に触れるとやけどの危険性があるため冷却後のラジエーターのキャップを外して冷却液のレベルが適切であるかを確認します。

冷却液タンクまたはラジエターキャップに最小/最大マークがありますので適切な範囲内にあることを確認します。

そして必要に応じて冷却液を追加します。

ラジエーター本体やホース、接続部などに漏れがないかを目視で確認し、ラジエーターの漏れチェックを行います。

ラジエーターフィンにホコリやゴミが詰まっていないかを確認し、必要に応じてフィンをブラシや圧縮空気で清掃します。

 

・冷却水点検

冷却水はエンジンの熱を吸収しラジエーターを通して放熱することでエンジンの適切な温度を維持します。

冷却水は冷却液とも呼ばれエンジン内部の熱を取り除きオーバーヒートを防ぎます。

冷却水の点検はエンジンが冷えた状態で行います。

エンジンに取り付けられた冷却水タンクまたはラジエターキャップに最小/最大マークがありますので、それを見て適切な範囲内にあることを確認します。

必要に応じて冷却水を追加します。

冷却水の品質の点検も必要です。

冷却水が汚れや錆で汚れていないかを目視で確認します。

汚れや異物が見つかった場合は冷却水を交換する必要があります。

ホースやコネクターも点検します。

冷却水ホースや接続部に漏れや損傷が見つかった場合は修理や交換が必要です。

定期的な冷却水の交換は重要です。

メーカーの推奨する交換周期を確認して適切なタイミングで冷却水を交換します。

 

トラックのエンジンにトラブルの発生したときの対処法

トラックのエンジンにはさまざまなトラブルが発生する可能性がありますが、以下に一般的なトラブルと対処法を解説します。

 

・点火系の問題

ディーゼルエンジンの点火系のトラブルはエンジンの始動時やエンジンの駆動中の燃焼時に発生することがあります。

ガソリンエンジンとは違いスパークプラグの無いディーゼルエンジンの場合、点火タイミングのズレなどが原因となります。

これによって起きるトラブルは、エンジンの始動が困難になったり、不規則なアイドリング、ノッキングにつながったり、パワーロスなどの問題となって現れる場合があります。

セルが回らない場合には電気系統のトラブルであったりバッテリーの液晶不足やバッテリー自体の不具合や故障が原因であったりすることが考えられます。

最悪の場合にはセル自体が故障していることも考えられます。

これらの問題には一般のユーザーでの対処は困難です。

専門の整備工場やディーラーに持ち込み整備士による入念な点検と調整・整備が必要となります。

これらの問題を未然に防ぐためには毎日の日常点検と走行中のエンジン音などに注意を払うことが大切です。

 

・燃料系の問題

燃料系のトラブルは燃料供給や燃料と空気の混合に関連して発生します。

これらの原因としては燃料ポンプの故障や燃料フィルターの目詰まり、燃料噴射装置の不具合などが考えられます。

これらによって燃料供給の不足や不均等な燃料混合が起こり、エンジンのパワーロス、異音や振動の増加などの問題が発生する場合があります。

これらの問題をふせぐためにはやはり毎日の日常点検と整備士による定期検査が重要で不可欠となります。

 

・冷却系の問題

冷却系のトラブルは冷却不良によりエンジンの過熱を引き起こします。

例えばラジエーターからの液漏れや冷却ファンの故障、サーモスタットの不具合などが原因となります。

これにより冷却液の漏れや冷却ファンの異常動作などの問題からエンジンの過熱が生じる場合があります。

これらのトラブルを未然に防ぐのも毎日の日常点検と整備士による定期検査が重要で不可欠です。

ラジエーターには走行中に虫や木の葉、小枝が風圧で付着することが少なくなくありません。

走行後にこれらの異物を取り除くこともこれらのトラブルを未然に防ぐことに役立ちます。

 

トラックに負担をかけない運転方法

 

トラックに負担をかけない運転方法はエンジンに優しくトラックの健康状態を優良のまま維持することにつながり、燃費向上にも役立ちます。

※ 出典:写真AC

 

・暖気運転を行う

スパークプラグを使わないディーゼルエンジンに冷えたエンジンは負担が大きくなってしまいます。

運転前にエンジンを暖気運転で十分温めて発進することが非常に大切です。

エンジンの負荷・負担を少なくする暖気運転はトラックに負担をかけない運転方法の一つです。

 

・急発進、急加速、急ブレーキをしない

急ブレーキは致し方ない場合もあることとは思います。

しかしながらこの急発進、急加速、急ブレーキはエンジンにもトラック自体にも大きな負担をかけてしまうばかりではありません。

思わぬ急激な負荷はお預かりした大切な積荷にも影響を与える場合もあります。

急発進、急加速、急ブレーキをしないことはトラックばかりかドライバー自身や事業主の問題にもなりかねません。

 

・積載方法を考える

最大量を積載する際にも、余裕を持って積載する際にもトラックの荷台に荷重が平均してかかるように積載することが大切です。

必要以上の負荷をエンジンにかけないために、トラックの荷台に偏った負荷をかけないことは安全輸送にも必要なことです。

始動し走行中のトラックは絶えず大小の地震に遭遇しているような状態です。

少しでもトラックへの負担を減らすことを考えたいものです。

 

まとめ

 

トラックの大きな命題は安全のもとでの積荷の輸送です。

そのための頑強で高出力のディーゼルエンジンは日々活躍します。

この先に迫りくる2050年の『カーボンニュートラル問題』やトラック業界の働き方を大きく変えてしまう『2040年問題』の解決のために現在のディーゼルエンジン使用のトラックは電気化されたトラックなどに置き換えられていくことでしょう。

その移行までの微妙な期間である現在、ディーゼルエンジン使用のトラックは今まで以上に点検に余念を無くして大切に乗り続けなければならないのかも知れません。

そのために今回の『豆知識』をご参考にしていただければ幸いなことと存じます。

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