オーバーハングを解説 トラックの事故を起こさないためのポイントとは
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はじめに
日本の基幹産業である運送業、一年365日、どこかで誰かがトラックを運転して物資を輸送して日本の産業を縁の下から支えています。
トラックを利用する運送業と交通事故は切り離せない立場にはありますが、『交通事故ゼロの思想を広め、交通事故ゼロの世界を実現する』ことは運送業界を支えさせていただく私たちZEAL、TRUCK FIVEの社員全員の切なる願いであり、「安全主義」「安全運転」「安全連携」を運転に関わる全ての人に広めていくことは私たちのミッションだと考えています。
私たちはそのためにはまず、知る事だと考えます。
トラックという巨大な鉄の塊の輸送機はより多くの積み荷を運ぶために人間により研究・開発されて現在に至っています。
その形状や重量であったり、スピードやパワーが交通事故のもとにもなっているのです。
トラックは私たちに幸せを運んでくれる便利な輸送機でありながら、使い方を間違えると人の命まで簡単に奪える非常に危険な道具となってしまう可能性を秘めています。
そんな認識を持っていただき、今回の『豆知識』ではトラックの車長がもととなり起きてしまうオーバーハングなどのトラック特有の事故につながるトラックの特徴を認識いただきたいと思います。
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オーバーハングとは
オーバーハングとは、トラック車重を支えるタイヤの中心から前と後ろの張り出た部分を言います。
前輪の張り出た部分をフロントオーバーハング、後輪の張り出た部分をリアオーバーハングと呼びます。
そして、その張り出た部分が右左折する際に反対車線などにオーバーして飛び出してしまう状態を『オーバーハング現象』と言います。
この『オーバーハング現象』はどの車にもあることですが、トラックやバスのオーバーハングが非常に長く、注意を怠ると事故につながってしまいます。
時折耳にするのは大型トラックにコンクリートの電柱を積んで走っていて左折時にはみ出した電柱が右車線に走っていた車に接触する事故です。
電柱には『危険注意』である赤いヒラヒラの目印をぶら下げてはいても、『オーバーハング現象』の認識を全てのドライバーが持ち合わせているわけではありません。
荷台からはみ出した部分がオーバーハングの長さに加わってしまいます。
荷台からはみ出して積載できる長さは大型トラックであれば1m近くにもなります。
今年2022年5月13日より道路交通法が改正されそのルールも変わっています。
オーバーハング現象に合わせて再確認してください。
※「自動車の積載の制限」に係る道路交通法施行令の一部改正について
公益社団法人全日本トラック協会ウェブサイトよりお借りしています。
『オーバーハング現象』の仕組みはトラックドライバーばかりか一般車両のドライバーもよく理解して、周囲に大型トラックやバス、長尺物の積荷をしているトラックを見かけた場合には注意が必要です。
自身で自分の身を守ることは交通災害を未然に防ぐ非常に大切なことです。
オーバーハングの具体例
では実際のオーバーハング現象を1/43の模型を使ってみてみたいと思います。
トラックは10tのウイングトラックです。
3-1左折時のオーバーハングによる事故例
トラックは左折をしようと左側車線に入り停止し、まさに発車しようとしています。
そこに直進をしようと乗用車が右車線を走ってきました。
(ピンクの線がトラックの後輪の軸です。この軸より後方がリアオーバーハングです。)
交差点で乗用車は停止し、トラックが先に発車しようとしています。
トラックは左折時に右側後方確認を怠り、乗用車に後部右側を接触させてしまいました。
後方部のリアオーバーハングがセンターラインを越えてしまっています。
この場合にはサイドミラーで確認し、必ず直進(もしくは右折)しようとしている乗用車が通過してしまうまで待ってください。
3-2右折時のオーバーハングによる事故例
オーバーハング現象によって起こる車線オーバーで左側車線の乗用車に接触してしまいました。
この場合もサイドミラーによっての後方確認を怠ること無く、通行車両をよく確認して右折してください。
3-3停車時からの発車する時のオーバーハング現象
歩道ギリギリで停車していると、発車時に大きくハンドルを切ると歩道の柵や電柱、郵便ボックス、電話ボックスなどに接触してしまう可能性がありますので十分な注意をして下さい。
大型トラックが道路脇に停車している際には発車時にリアオーバーハングが降り出されると思い周囲の歩行者、自転車、オートバイなどの第三者は自分で身を守ることを考えてください。
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オーバーハング以外のトラック特有の事故
トラックは荷を運ぶというミッションのなかで誕生し、その独特な長方形の形を生み出しました。
そしてこの車長の長さからトラック独特の動きや運転における癖があります。
これらに注意し、事故を未然に防いで交通災害を無くしていかなければなりません。
公益社団法人全日本トラック協会様ウェブサイトから資料を一部お借りし、オーバーハング現象以外のトラック独特の事故につながる現象を確認させていただきます。
1 内輪差
トラックは内輪差が大きいということをしっかり認識しましょう。
車長が長いトラックはホイールベースが長く、当然内輪差は大きくなります。
内輪差の大きさによる事故は特に視界が悪い左折時に多いです。
左折時に左側を歩く歩行者や走るバイクを巻き込む事故を起こし易いです。
左折時には歩行者やバイクに十分注意して運転してください。
2 車体左折時のふくらみ
これも内輪差に関係する左折時の車体のセンターラインのオーバーです。
内輪差の大きさゆえ、狭い道路へ左折で入って行く際にどうしても一度大きく右に寄って左折します。
この時にセンターラインをオーバーしてふくらみますが、このセンターラインオーバーは道路交通法に違反しています。
※公益社団法人全日本トラック協会『トラックドライバーのための安全運転の基礎知識』よりお借りしています。
3 車幅とすれ違い
トラックの車幅は広く2.2m~2.5mもあります。乗用車の1.3倍ほどあります。
狭い道路では接触事故に注意が必要です。
対向車とのすれ違い時に接触事故を起こす可能性があります。
自身の運転技量を過信することなく徐行や一時停止を行って安全を確認して通過するようにして下さい。
4 車幅とはみ出し
狭い道幅のカーブ走行時には、速度の減速はもちろんですが、センターラインオーバーをしないように車幅を意識しての運転が必要です。
特に右カーブでは、視線が右に向きやすく、右側ミラーでしっかりセンターラインをとらえてはみ出さないように運転をしてください。
※こちらも公益社団法人全日本トラック協会『トラックドライバーのための安全運転の基礎知識』よりお借りしています。
その他のトラック事故を起こさないためのポイント
近年の日本の気象は『吹けば大風、降れば大雨』と以前の日本と同様に考え備えていては対処しきれないケースが出てきています。
事故を起こさずに安全安心のなか、運送と言うミッションを果たして会社にそして家族の待つわが家に帰るには、この気象にも十分の配慮をして十分の備えをしなければなりません。
その備えのためのポイントもいくつか確認しておきたいと思います。
1 雨天時はスピードを落とす
雨天時には視界が悪くなり、危険の発見が遅れてしまいます。
サイドミラーも水滴で見えにくくなります。
この危険の発見の遅れがさまざまな事故につながってしまいます。
また、路面が濡れているため、停止距離が長くなるとともにスリップの危険性も大きくなります。
特に降り始めからしばらくの間が最もスリップしやすく注意が必要です。
雨が降り始めたら落ち着き、まずはスピードを落としてください。
急ハンドル、急ブレーキはスリップの原因となりますから厳禁です。
そして、進路変更すること無く走行してください。
2 降雪時・積雪時は車間距離を十分とる
降雪時にも視界が悪くなります、大雪、吹雪の場合には雨天時よりも視界は悪くなります。
そして、スリップも雨天時以上に激しく起きるようになります。
絶えず路面の凍結に注意が必要になります。
特に橋上、トンネルの出入り口、交差点付近、日陰になっているところに注意してください。
降雪時・積雪時の事故防止の対応はスピードを落として車間距離を十分とることです。
そして視界の悪い時には一時退避して様子をみて、多重事故に巻き込まれないようにすることが一番大切です。
3 濃霧時は安全な場所に退避する
濃霧時の視界はほとんどきかなくなります。
追突を避けるために徐々に減速し、フォグランプやヘッドライトを点灯し自車の存在を対向車線のトラックに知らせます。
センターラインやガードレールを目安にして低速で走行し、自社の存在を知らせるためにクラクションを使うことも大切です。
そして、無理な走行は続けずに安全な場所にいったん退避して霧の様子を見るようにしましょう。
4 強風時はハンドルを切り返さない・急ブレーキを踏まない
強風時は風が直接当たるトラックの走行は非常に危険です。
ハンドルを取られたり、トラックが流されたりします。
強風の力に驚いてハンドルを切り返したり急ブレーキを踏んだりしないようにしましょう。
橋上やトンネルの出口は強く風が吹きます。
ハンドルをしっかり握ってハンドルを取られないようにしましょう。
※公益社団法人全日本トラック協会の『事業用トラックドライバー研修テキスト 危険を予測した運転』を参照しています。
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おわりに
日本の物流を担うトラック輸送には安全・確実・迅速という高いハードルが当たり前となっています。
そして、気象や自然災害ばかりかトラックと言う輸送機械の特性までをも相手に日々の業務に当たらなければなりません。
そんな現状でありながらでありながら、危険、汚い、きつい、の3Kの職業と揶揄されて人気の無い職業となっています。
しかしながらトラック輸送は日本の産業を担う重要な基幹産業なのです。
今後、人に優しいAIやロボット、電気・燃料電池トラックがこのトラック輸送業界を変えていってくれることでしょう。
ただ、この安全に関してはまだまだ私たちの努力が必要でしょう。
プロとしてこの『オーバーハング』などのトラック特有の現象を理解し、把握して明日からの安全運転につなげていっていただきたいとお願いします。
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