トラックのタイヤ交換方法まとめ!タイヤの種類・交換費用も合わせて解説

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はじめに

 

タイヤの発明は、まずは天然ゴムの発見からでした。

1495年コロンブスが西インド諸島ハイチで発見した天然ゴムを西欧に伝えたことから始まります。

空気入りタイヤは1845年にスコットランドの発明家ロバート・ウィリアム・トムソンが発明し特許を取得しましたが、この時には実用化には至っておりません、

 

1888年、スコットランドの獣医師ジョン・ボイド・ダンロップ(ダンロップ創業者)が自転車用の空気入りタイヤ実用化するまで待たなければなりませんでした。

 

自動車用の空気入りタイヤは、フランス人のアンドレ・ミシュラン、エドゥアール・ミシュラン(ミシュラン創業)のミシュラン兄弟が、1895年に開催されたパリからボルドーまでを往復する、全行程1,200kmのレースに使用したのが最初で、このレースでミシュラン兄弟は100回近いパンクにもめげることなく、規定時間を超過しながらも完走しました。

 

耐久性に問題があったとは言え、乗り心地、グリップ力、走行安定性に格段に優れていることを証明したため、これ以降空気入りタイヤが急速に普及しました。

 

言うまでもなく、タイヤ(空気入りタイヤ)の存在は今でこそ当たり前になっていますが、このタイヤの普及が無ければ安心・安全のもとに物を輸送することは出来ませんでした。

 

そして、このタイヤは安心・安全ばかりではなく、適切な利用を行うことによって燃費やドライバーの疲労にまで影響してきます。

 

今回はタイヤの交換方法から現在問題になっている走行時の脱輪の問題に関してまで掘り下げて説明させていただきます。

 

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タイヤ交換

 

時々ニュースで耳にするトラックの脱輪事故、過去には死亡事故にまで至ってしまった大きな事故まであったのでその恐ろしさは周知のことと思います。

 

この脱輪事故は2011年(平成23年)から増え続け2020年(令和2年)までに12倍にまで増え続けています。

※国土交通省自動車局資料(大型車の車輪脱落事故発生状況と傾向分析について)令和4年2月より引用

実はこの国土交通省の『大型車の車輪脱落事故の状況①』の発生件数の少なかった時期2011年(平成23年)の一年手前である2010年(平成22年)にタイヤの取付け方式が国内規格であるJIS規格方式から国際規格であるISO規格方式に変更されています。

 

これは海外に輸出をし易くする目的などでの変更だったのですが、この規格変更が脱輪事故の発生数を増やしている背景にあるのではないかと一部で指摘されています。

 

トラックのホイールを合わせてその重量は一本100㎏前後あります。

万が一、運悪く市街地で脱輪して人や車両に衝突すれば重大事故になり、高速道路であるならば大惨事を引き起こす可能性のある脱輪事故です。

※国土交通省自動車局資料(大型車の車輪脱落事故発生状況と傾向分析について)令和4年2月より引用

 

その他、この脱輪事故の原因には整備士の不足も指摘されています。

上の国土交通省の作成した表(大型車の車輪脱落事故の状況②)をご覧になって頂くと、ご理解していただけると思いますが、冬期用タイヤに交換する時期の11月から翌年2月までに約65%の事故が集中しています。

 

そして、そのうち半数以上が北海道、東北、北信越で発生、冬期での積雪時期に集中しているのです。

 

国土交通省はこの事故件数の多さの集中を、自動車整備会社の人手不足の影響を無視することは出来ないとしています。

 

加えて、この11月から翌年2月までに脱輪事故が集中しているのは、計画的なタイヤ交換計画がなされていないためとも報告しています。

雪が降り始めて冬期用のスタッドレスタイヤに取り換えるため一度の短期間に整備会社にはタイヤ交換作業が集中してしまいます。

 

そのため受けきれないタイヤ交換作業を自社で行い、電動工具でナットを締めた後、手作業で締め具合を確認する手順が抜けてしまって事故につながるケースも出ています。

冬期に集中する脱輪事故はタイヤ交換後1か月以内に起きるケースが多いのです。

 

冬期の安全走行のための冬期用タイヤの使用の重要性もさることながら、冬用タイヤへの交換作業、それも作業手順に則ったタイヤ交換作業が非常に重要なのです。

 

JIS規格とISO規格

 

2010年に国土交通省、経済産業省の主導のもと、トラックの車両規格はJIS規格方式からISO規格方式に変更されました。

 

ルールでは2009年10月からの新型車及び、2010年9月からの継続車にJIS規格方式からISO規格方式に変更されて採用されることとなりました。

 

JIS規格方式でのネジは、車両右側ホイールは正ネジ(時計まわり)、左側ホイールは逆ネジ(時計まわりの逆)を採用しています。これはタイヤの回転方向によってネジが締め付けられるようにする発想のもとです。 (換気扇や扇風機の羽根が逆ネジまわりで外れにくくしているのと同じです。)

 

ところが、新たなISO規格方式でのネジは左右側ともに正ネジ(時計まわり)です。

増加する脱輪事故における脱輪するタイヤは左後輪が多いのはこの事実が関係しているのではないかと、その可能性を指摘する整備関係者は少なくないのです。

 

世界で90%以上採用されているISO規格方式に合わせることは日本のトラックを世界に輸出し、日本の国力を増強するのに不可欠なことだったのかも知れません。

 

しかしながら日本の道路事情、交通法規も世界規格には逆らっているわけではありませんが、日本ではトラック等車両は左側通行がルールとなっています。

左側通行であるために左折時に左側後部車輪に内輪差によって強い振動を与えます。

ただでさえ、左側はナットを緩める方向へタイヤが回っていることからカーブによる強い振動でさらにナットを緩めてしまうのです。

※国土交通省自動車局資料(大型車の車輪脱落事故発生状況と傾向分析について)令和4年2月より引用

 

トラックの脱輪事故の増加と規格変更との因果関係は定かではありませんが、規格変更後のこの10年間トラックの脱輪事故が増え続けていることは事実です。

 

どんな事故も、たった一つの原因がもとで起きることではありません。

さまざまな要因を考えあわせ、もちろんヒューマンエラーも想定し、整備管理者のいる整備工場でのタイヤ交換作業を実施することが望ましいですが、やむを得ない理由があって自社でタイヤ交換作業を行う際には正しい知識を有した者が作業を実施ししなければなりません。

 

そして作業確認ばかりではなく、日常の点検やタイヤ交換後の定距離走行後のナットの増締め、確認点検などが必要なことも言うまでもありません。

 

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タイヤの種類

 

タイヤ交換の理由は様々です。冬期の積雪に備えるための冬期用タイヤ、スタッドレスタイヤへの交換もあれば、使用耐久年数に達したタイヤの交換も、燃費向上のためのタイヤ交換もあるでしょう。

 

ここではタイヤの構造での種類、トレッド(溝の刻み方)のパターンをよく知って適切なタイヤ交換を行うことが出来るようにタイヤの種類の再確認を行いたいと思います。

 

 

 

 

 

 

タイヤの構造での種類

 ・チューブタイヤ

ゴムのチューブをタイヤ内部に備えて空気圧を保つ従来式の構造のタイヤ。

現在ではさまざまなメリットからチューブレスタイヤが採用されているためチューブタイヤの使用は極めて少なくなっています。

・チューブレスタイヤ

名称通りゴム製のチューブは使われておらず、カーカス(タイヤの骨格を構成する部分)の内部をゴム製インナーで被覆して機密性を高め、タイヤ全体の空気圧を維持しています。

万が一、釘が刺さってもゴム製のインナーが伸びて釘との隙間や釘穴を防ぐために空気漏れによる急な空気圧の低下にはつながりません。

そして、タイヤ内の空気が直接ホイールに触れているため、放熱性に優れています。

・ラジアルタイヤ

ラジアルタイヤとバイアスタイヤの違いはタイヤの骨格を構成するカーカスの配置の違いです。

現在のタイヤの主流はこのラジアルタイヤです。

カーカスをラジアル状(放射状)に配置したもので路面との摩擦が少なく燃費がよくなり、摩擦の減少によりタイヤの発熱が少なくなり、グリップの良さからスリップが少なくなり、けん引力が増強されます。

当然、操縦性は向上して安定性が高まるのがこのラジアルタイヤの特徴です。

・バイアスタイヤ

バイアスタイヤではカーカスを斜めに配置してタイヤの骨格を構成しています。

カーカスを互いに逆方向に重ねることでねじれを起こさないようにしています。

バイアスタイヤはその構造によってタイヤ全体で路面の衝撃を吸収します。

それによって走行中の衝撃はより吸収され、悪路においても安定した乗り心地を得ることが出来ます。

そして、大きな荷重に耐え得る特性を持つので20tトラックのような超重量級の大型トラックなどで現在もバイアスタイヤが使われています。

 

タイヤのトレッドパターン

 

トレッドとはタイヤの構造で路面と接する部分を指します。

この溝の刻み方によって路面との設置状態は変わりトラックの操縦性や駆動力、制動力は変わってきます。

このトレッドは大きく4つのパターンに分かれてその能力・特徴にあった場面で適切に使われることが望ましいです。

大型トラックのトレッドの厚みは約3cmもあり、乗用車のトレッドの2倍以上あります。

 

・リブ型パターン

ギザギザな縦溝が円周方向に平行して刻まれた模様となっているのが特徴です。

そのため、直進走行での安定性が高く、トラックやバスばかりでなく乗用車にまでと、幅広い車種で利用されているトレッドパターンのタイヤです。

撥水性に優れた特徴を持ち、高速道路や舗装された道路の走行に適しています。

 

・ラグ型パターン

ラグ型パターンは左右横方向に深く溝が刻まれています。

その溝は駆動力、制動力を非常に高め、路面との接地の強さから牽引力も優れ舗装整備された路面ばかりではなく、悪路でも活躍可能なトレッドパターンのタイヤです。

トラックやバスばかりではなく、建設車両や農耕車両にも使用されるのがラグ型パターンのタイヤです。

 

・リブラグ型パターン ミックス

名称の通りリグ型とラグ型の長所をミックスした汎用性の高いトレッドパターンです。

タイヤ幅の真ん中にリブ型パターン、左右横端にラグ型パターンの溝が入っています。

トラック、バスから乗用車まで幅広い車種で利用されているタイヤです。

トラックでは長距離、高速走行にはやや不向きなため、主に近距離輸送に使用されています。

 

・ブロック型パターン スタッドレス

その名称通りのブロック型のトレッドパターンはその優れたグリップ力と撥水力で雪上、氷上での安定走行を可能にします。

降雪地域での冬期用タイヤとしてその時期の来る前からタイヤ交換して備えます。

ブロック型パターンのタイヤにはスタッドレス以外にもオールシーズン使用できる日本独自のトレッドパターンもあります。

 

タイヤ交換の方法と費用

 

タイヤ交換に関して、その方法はトラックの所有状況や緊急時のパンクなどのトラブル発生の場所によってさまざまでしょう。

 

大手の運送会社であれば自社の整備工場でのタイヤ交換が当たり前で、社員である整備管理者の指示のもとタイヤ交換はなされるでしょう。

 

しかし、整備工場を持たぬ運送会社や個人事業主であればタイヤ交換の方法は様々でしょう。

ディーラーに任せる方法、特約の整備工場で行う方法、タイヤ専門店に依頼する方法、契約先のガソリンスタンドに任せることも可能でしょう。

 

そして運送途中、仕事中でのパンク等のトラブル時には契約先のディーラー、大手タイヤメーカーや大手燃料給油業者のロードサービスをあらかじめ契約して利用するのが現実的かと思います。

 

タイヤ交換の方法

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

基本的にトラックのタイヤ交換方法は乗用車のタイヤ交換方法と同じです。

しかしながら、大型トラックのタイヤのようなホイールまで含めて重量100㎏前後もあるタイヤ交換を個人で行うことは現実的なことではないと思われます。

 

しかしながら、緊急時の対応のためにトラックのホイール部分の構造を知るためにもタイヤ交換の方法を知ることには意義があると思われます。

運行途中のパンクを想定して、タイヤ交換の一巡の流れを紹介させていただきます。

 

1.まずは十分に広い場所をタイヤ交換作業のスペースとして確保してください。

安全確保のためです。

ジャッキでトラックを持ち上げなければなりません。平坦なコンクリートのような固い地面のスペースを確保してください。

 

2.スペアタイヤを用意しておき、車止めでタイヤを固定してください。

これは安全のためですので外す反対側のタイヤにしっかり車止めを噛ませて固定してください。

 

3.この段階でジャッキアップする前にホイールのナットを緩めてください。

JIS規格のホイールかISO規格のホイールかの事前の確認も重要です。

ナットは完全に外さずに緩めるだけにとどめてください。

 

4.車体に必ずジャッキを噛ませるジャッキポイントがあるのでそのポイントを見つけてジャッキを当てます。

地面が柔らかい場合にはジャッキの下に敷板を用意してジャッキを安定させてください。

タイヤが浮いたらリジットラック(ウマ)を地面と車体の間に挟みこんでください。

油圧ジャッキは時間が経つとトラックの自重で徐々に下がってしまいます。そのためにもこのリジットラック(ウマ)の使用は重要です。

タイヤが地面から2~3cm浮いた状態に固定します。

 

5.ここで事前に緩めておいたナットをすべて取り外します。

そして、タイヤの下にバールを入れてテコの要領でタイヤを外します。

 

6.スペアタイヤと入れ替え、ナットを締めます。

このナット締めの手順は、対角線にあるナットを順番に締めていきます。

まずは手で締め込み、全部固定出来たらタイヤレンチで締め込みます。

最終的なトルクアップはタイヤを降ろしてからになりますので、これは仮止めです。

 

7.ジャッキを気持ち上げてリジットラック(ウマ)を外してください。

ジャッキはゆっくり下げて、その時にタイヤの下に自分の足や物を挟まないように十分注意してください。

 

8.ナットの本締めをしましょう。

緊急時である出先での締め込みでは締め込み過ぎに注意してください。

ホイールナットには規定トルクが決められていますので、交換後に必ず整備工場などでトルクチェックを受けてください。

 

9.重量物であり、転がりやすいタイヤの交換作業です。

出来れば二人以上で作業に当たり、万が一の場合に避難できるよう十分な広さの場所で作業を行ってください。

 

タイヤ交換の費用

 

タイヤ交換の工賃は継続して利用している専属整備工場なのかタイヤ専門店なのか、燃料給油店なのか、ディーラーなのか、タイヤメーカーなのかで全く変わってしまいます。

新規でタイヤを購入するのか、否かでも大きく変わるでしょう。

 

今後、タイヤ交換を含めたトラック整備においてもサブスクリプション方式が広まっていくことと予想されます。

過渡期である現在の段階では具体的なタイヤ交換の工賃は控えさせていただきたく思います。

 

 

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タイヤソリューション(今後タイヤ交換の出来ること)

 

トラック業界にどんどんIT機器が入り込み、この先もっと深刻になりゆく働き手不足解消のためにトラックドライバーや運送業界で働く皆さんの仕事は省略化されつつあります。

 

今後電動化など化石燃料に頼らないトラックの普及によりタイヤ交換やタイヤ自体が変わる可能性もあるようです。

 

現在、EVの課題の一つは持続できる走行距離です。そのために電池や充電方法の研究がされていますが、電池を減らさないための転がり抵抗地の少ないタイヤの研究開発も各タイヤメーカーで進められています。

 

消耗品であるタイヤのメンテナンスは重要で不可欠です。

無人でのトラック走行ではパンクでのタイヤ交換は出来ません。

この課題解決のためにパンクの無い『エアレスタイヤ』が開発されています。

 

コネクテッド技術を用いて車両とタイヤ、それから道路を連携させて最適な運転、環境、地球に優しい未来をタイヤソリューションによって作り上げようとしています。

 

そしてさらにはタイヤの特性とデジタルを活かして新事業を模索するメーカーもあるようです。

モノを移動させるトラックの一部品のみではなく、『AI』や『IoT』を活かしての新しい発想です。

タイヤに路面の状態、状況の道路情報を拾わせて道路の改修箇所改修時期を予測させるのです。

 

タイヤをトラックなどの運送車両の一部品としてとらえるのではなくセンサーの一部として活用するのです。

時代と共にタイヤの概念自体が今後変化していくかも知れません。

 

最後に

 

『トラックのタイヤ交換方法』、私たちトラック運送に関係する人間にとって切っても切ることの出来ない重要な問題です。

この重要な問題は日本、世界がデジタル化の波で変化しつつあるようにそれほど時間のかからぬうちに違った意味で重要性を増してくるかも知れません。

しかし、まだしばらくの間は交通安全と安心の走りが最重要課題でしょう。

そのためのホイールのJIS規格とISO規格の問題、それに付随する脱輪問題、日常業務に関するタイヤ交換の事、すべてを絶えず意識して日々の業務に当たっていただきたく思います。

 

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