フェード現象とは?ベーパーロック現象との違いや対処法まで徹底解説
お客様の大切な荷物や乗客の皆さまの命を預かるトラックやバスであってはならない交通事故、その大きな原因のともなるブレーキの異常、そのなかの一つがフェード現象です。
フェード現象は人為的なミス、操作ミスによって起きる現象です。
フェード現象はその仕組みをよく理解すれば防ぐことの出来る現象なのです。
フェード現象と同様にブレーキ操作の誤用から起きるベーパーロック現象とともにその違いや対処法までを今回の『豆知識』で解説させていただきます。
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フェード現象とは
フェード現象とはトラック・バス、乗用車が走行中にブレーキを必要以上に多用することによってブレーキに起きる現象です。
ブレーキの多用が発生させる摩擦熱が原因となり、ブレーキが持つ本来の制動力を著しく落としてしまいます。
トラックやバスの車両総重量は非常に大きく、動き出した車体を止めるのには非常に大きな力が必要になります。
そのためにブレーキがあるのですが、ブレーキの構造的な理由から起きるこのフェード現象などがブレーキの力を落としてしまいます。
総重量の重さによって加速してしまう下り坂ではエンジンブレーキ、排気ブレーキを主に使いながらフットブレーキを使わなければなりません。
フェード現象とはドライバーの判断ミスによる間違ったブレーキ操作によって起きる現象とも言えるでしょう。
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ブレーキの仕組み
ブレーキにはフットブレーキとエンジンブレーキがあります。
フットブレーキはその名称通りの私たちが普通自動車に乗っている時に行うのと同様なブレーキペダルを踏むことで作用するブレーキです。
そして、アクセルペダルを離しエンジンの回転数を落としたり、ギアチェンジをしてシフトダウンを行いエンジンの回転数を落とす減速方法がエンジンブレーキです。
フェード現象はフットブレーキのみに起こる現象です。
フットブレーキの仕組みを知ることでフェード現象が起きる原因が理解しやすくなります。
まずはフットブレーキの仕組みをご紹介します。
ブレーキにはディスクブレーキとドラムブレーキがあります。
ブレーキペダルを踏み込んだ力は油圧装置を伝わってディスクブレーキやドラムブレーキを作用させます。
ディスクブレーキはホイールに装着されている円盤型(ディスク型)の部品をキャリパーと呼ばれる部品が挟み込んで回転を止めます。
※ディスクブレーキ写真
ドラムブレーキはホイールに装着された円筒形状の部品に内部から制輪子と呼ばれるブレーキシューを押し付けて回転を止めます。
※ドラムブレーキ内部写真
ディスクブレーキで回転を止めるキャリパーに装着されているパットや、ドラムブレーキで回転を止める制輪子と呼ばれるブレーキシューが過度なブレーキ操作による摩擦熱で過熱してしまいパットやブレーキシューが焼き付いてしまいます。
その結果、ブレーキの摩擦係数は低下してしまいブレーキがきかなくなってしまうのです。
これがブレーキの仕組みとその仕組みゆえに誤った操作で起こってしまうフェード現象が起きる理由です。
フェード現象とベーパーロック現象
フェード現象とベーパーロック現象はともにフットブレーキの誤操作による現象です
どちらもドライバーの過度なブレーキの使用によって生じる摩擦熱がもたらす現象です。
・フェード現象の原因
「フェード」は英語のfade(衰える・無くなっていく、フェードアウトのフェード)です。
長い下り坂などでフットブレーキを続けることによって起こる摩擦熱により高熱を持っ
てしまったブレーキシューやパッドが正常に作動しなくなり制動力が無くなっていく状
態状態がフェード現象であり、その原因です。
・ベーパーロック現象の原因
「ベーパー」は英語のvaper(蒸気)です。
ベーパーロック現象の原因もドライバーによるブレーキの誤操作です。
過度なブレーキ使用が摩擦熱で高熱を発生し、その熱が油圧ブレーキシステム内のブレーキ液を沸騰させてしまい気泡を発生さてしまいます。
その泡がクッションの役目をしてしまって、いくらブレーキペダルを踏んでもドライバーの踏み込む力はブレーキにまで届かないのです。
それがベーパーロック現象であり、その原因なのです。
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フェード現象を防ぐためには
フェード現象の原因を考えれば予防策は自ずと出て来ます。
まずは就業時のトラック・バスの日常点検は非常に大切です。
そして初心に帰り、免許取得時に勉強したブレーキ操作の基本を思い出して常に心にとめてください。
・点検と部品交換の重要性
ブレーキパッドやブレーキシューの定期的な、もしくは走行距離数を決めての交換が大切です。
油圧ブレーキシステム内のブレーキフルードと呼ばれるブレーキ液の質と量の点検も行ってください。
このブレーキフルードは水分の吸湿性を持っており、水が混ざることによって本来は高い沸点が下がってしまいフェード現象を発生しやすくなってしまいます。
ブレーキの効きに異常を感じた時にはこれらの部品をすぐにチェックしてください。
・ブレーキの操作方法の重要性
フェード現象は誤った運転方法によるブレーキの作動異常です。
車両総重量の大きなトラック、バスの減速・停止にはフットブレーキの使用ではなく、まずはエンジンブレーキ・排気ブレーキ等の利用が原則です。
そして、トラック・バスの運転方法です。
スピードを出し過ぎないことや、あってはならないことですが過積載を行わないことはフェード現象を起こさない大きな予防策となります。
フェード現象の予兆
このブレーキの過度な踏み過ぎによって起きるフェード現象にはいくつかの予兆があります。
ドライバーの五感で感じることの出来る予兆ばかりです。
運転中にドライバーは注意を払わねばならぬ事ばかりですが、その中にこのフェード現象の予兆の感知も加えてください。
・ブレーキの不調
いつものブレーキを踏む感触と違えば何かが起こりかけている予兆と考えてください。
運転中にブレーキの効きが悪いと感じたらまずはフェード現象を疑ってみてください。
ブレーキに何らかの異常があれば、そのブレーキ部に直結しているブレーキペダルに通常では起こらない振動が伝わってきます。
それを足で感じてください。
まずは五感のなかの足での触覚です。
毎日運転する相棒であるトラックやバスがいつもと違う動きをすれば間違いなくすぐに感じることが出来るはずです。
・ブレーキの異音、異臭
フェード現象の原因はドライバーの誤ったブレーキ操作によるブレーキ部品の過度な摩擦による発熱です。
通常とは違う状態のブレーキ部の部品は発熱で金属部品の膨張もあれば各部品の変化も起こります。
そんな原因で異音は起こります。
通常の運転で耳にすることのない異音はドライバーにはすぐ聞き取れるはずです。
そして、摩擦の高温の発熱で焼かれたブレーキパッドやブレーキシューは異臭を発生させてドライバーはすぐに気が付くことが出来るでしょう。
五感のなかの聴覚・嗅覚です。
異音や異臭を感じた時にはすぐに次に取る行動を考えてください。
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フェード現象の対処法
さて、いかに予防策を打ち、フェード現象に至る原因を熟知しようとも、万が一の可能性を考えておきましょう。
フェード現象が起きてしまった場合を想定しておきましょう。
そんな時にこそあわてずに対処できるようにしたいものです。
その対処法をお伝えします。
・まずは停車を考える
加熱してしまったブレーキの温度を下げるためにトラック・バスを停車させて、エンジンを切って時間をかけてブレーキ部の熱を冷まして下さい。
その際、徐々にスピードを落とすために順番にシフトチェンジをして減速していってください。
一度に低速ギアにいれて減速してしまうのは禁物です。
ギアが破損してしまったら元も子もありません。
特に下り坂でフェード現象は起きやすいのでこの減速のための操作は落ち着いて注意して行ってください。
そのエンジンブレーキをかけ、次には排気ブレーキでの対応を考えてください。
重量物を積載したトラックは下り坂ではアクセルを踏むことが無くとも自身の重量で加速します。
そこにフェード現象を起こし、普段とまったく違うブレーキの反応にドライバーは驚くに違いありません。
落ち着いて最悪の場合にはトラックのボディをガードレールに擦り付けて減速を試みてください。
一番に考えないといけないのはドライバー自身の生命です。
まずは減速して、停車を考えてください。
・普段の整備・点検を大切に
最終的に何にも増して必要で重要なのはトラック・バスの健康状態を優良に保つことです。
始業前の日常点検に始まり、定期点検である3ヶ月点検、12ヶ月点検そして車検と数多い点検がありその都度の不備不良で整備等を行わなければなりません。
運転の担当をするドライバーも自身が毎日乗車するトラック・バスの各点検結果や整備状況に注意して状態を把握してください。
大切なお客様の命、大切な積荷ばかりか、自身の命や家族の生活までかかわっているのです。
普段の整備・点検はフェード現象などのトラブルを無くすために日々、そして定期的に行っていることなのです。
大切なお客様の命、大切な積荷を目的地にまで無事にお届けすることは当たり前のことであり、このことで会社の事業がなされ、信用として積み重ねられて行きます。
そしてそのことが皆さまの給料になりご家族様とともの皆様の生活に結び付いています。
普段の整備・点検が大切であることを強くご認識ください。
まとめ
その原因や理由が分かっていても防ぐことが出来ない交通事故のように、このフェード現象も無くなることはないのかも知れません。
近い将来、自動運転のトラックやバスが走り出したらそれがフェード現象などのトラブルにどう対処していくのかは興味ある問題かも知れません。
しかし今は現時点での考えで、まずはこのフェード現象の仕組みを理解し、その場に運悪く遭遇してしまったらこの『豆知識』の内容を思い出して対処してください。
人間の作り出したトラック・バスです。
落ち着くことさえ出来ればきっと対処できるはずです。
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