トラック業界で勝つためには？ 運送業界の今後や2024年問題などの課題を解説！
戦後80年間、日本を下支えしてきたトラック業界は、現在大きな危機に直面しています。それは、日本の構造的問題である少子高齢化によるドライバーを中心とする働き手不足や、働き方改革による労働時間の制限を課せられた2024年問題をはじめ、物流の主役でありながら高収入を得ることが難しく、３Kであることも手伝って、若者からは敬遠されてしまうといったひずみを根底に持つトラック業界の現状です。
その現状を打破するために、今後トラックメーカーや物流関連業界、IT関連業界等の技術やシステムの革新を得ながら、働き方改革を進めつつ、トラック業界を明るい展望の持てる業界に育てなければなりません。このままこのトラック業界を低空飛行させるわけにはいかず、若者たちが目を輝かせて飛び込んでくるような業界に変えていかなければなりません。なくなれば日本経済は成り立たず、決してなくなることのないトラック業界であることを強く認識してください。そして、このトラック業界で勝ち残っていってください。
目次
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トラック業界の直面する課題
日本経済の基幹産業であるトラック業界は現在大きな岐路に立たされています。少子高齢化という社会的な問題にくわえ、2024年問題などの構造的な問題に直面しています。まずはその直面する課題をよく把握したいと思います。
・2024年問題がもたらす影響
運送業界の2024年問題は、働き方改革法案によってドライバーの労働時間に上限が課せられたことによって起こる問題です。ドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されることで、一人当たりの走行距離が短くなり、長距離での輸送ができなくなると懸念された問題です。この問題はドライバーの労働時間を減らすことで、ドライバーの収入を減らしてしまう問題も含んでいます。
社会的構造である少子高齢化によるドライバー不足に、2024年問題は拍車をかけています。現状、ドライバーたちは時間外手当によって収入を増やし、生計をなり立たせています。全職業平均より労働時間は年間300～400時間長いにもかかわらず、トラックドライバーの年収は20万～50万円低いという実態があります。
日本になくてはならない基幹産業としての運送業界の賃金が低すぎる実態があります。それは、運送業のほぼ99％が中小・零細企業であり、その声が世の中に届かず、その実態を知る者は限られているといった原因や、運送業界には競合他社が多すぎて売り手市場の中、強い交渉力を持てない現実があります。
・物流コスト上昇と消費者への影響
世の中の物価が上がり、運送業界の運賃値上げは避けることのできない状況にあります。燃料は値上がりし、人材確保のために賃金アップを実施し、世の中の流れに沿って安全や環境対策に対応する費用も増加するばかりです。他業界が製品に価格転嫁を行うように運賃を上げて対応せざるを得ないのが今の運送業界の現状なのです。
物流コスト増加という社会に対する大きな影響も生じます。ドライバーの人数が増えなければ、960時間の残業時間という縛りのもと、現状の物流サービスを維持することは不可能になります。それを解決する新しい仕組みを作るためには投資が必要で、物流コストにその負担はかかってきます。
それができなければ、配達の遅延や配送サービスの縮小を実施するしかなくなってしまいます。そしてこの物流コストの上昇は、消費者への負担として大きくのしかかってきます。
しかし今、これまで多くのしわ寄せを運送業界で受け入れていた仕組みや、習慣を改善すべき時期だと考えるべきかもしれません。消費者は配送方法の変換や送料負担増などを受け入れていく時期がやってきているのかもしれません。
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課題だけじゃない！トラック業界の新たな可能性
トラック業界は多くの課題を抱えるばかりではありません。若者たちが希望を見出し、女性や高齢者にも開かれたトラック業界となり、課題解決にもつながるトラック業界の新たな可能性を紹介します。
・デジタル技術が切り拓く物流の未来
自動運転技術の導入は物流の効率化を促進し、安全性の向上に貢献します。一部実用化も進んでいる海外に遅れは取るものの、日本では、各社がレベル4自動運転トラックの実用化を目指して開発を進めています。新東名高速道路での大規模実証実験が行われ、着実に成果を上げています。
人間の運転と組み合わせれば960時間という拘束によって困難となる長距離輸送も可能となっていくことでしょう。そして、隊列走行も組み合わせれば経費節減も可能です。ただし、これらには大きな投資が必要になり、99％という中小・零細企業すべてがその恩恵に預かるためには大きな仕組みづくりと公的資金の投入が望まれます。
物流の未来はデジタル技術の活用にかかっているといっても過言ではないでしょう。デジタルの最新技術はトラックの自動運転技術ばかりではありません。効率的な配送ルートの作成を、熟練の担当者に代わり、AIが行うことによって「配送ルート最適化」は標準化された業務となります。それによる大きなメリットは、下記のようになります。
・ドライバーの長時間労働を抑えることが可能になる
・人件費・燃料費・車両費を削減できる
・CO2の排出量を削減できる
・配送ルート作成の手間や時間が短縮できる
働き方改革に向けての改善や、環境問題への取組みとなり、効率化されたことによって、そこには時間が生まれ、配送ルートの作成担当者たちは新たな仕事に向かうことができ、新しいビジネスチャンスが生まれると考えることもできます。多くのデジタル技術が物流の未来をさまざまな方面から切り拓きつつあります。
・働き方改革が生み出す多様な雇用形態
限られた働き手をフル活用する手立てを考える必要もあるでしょう。2023年総務省の調査によれば、トラック運送事業（事務職含む）に従事する女性の働き手は、全体の約201万人に対して20.4％（約41万人）、女性のドライバー等、輸送・機械運転従事者は3.4％（約6.8万人）と低い状況です。そして、高齢者に近づく50歳以上の就業者は49.7％（約100万人）を占め、深刻化する高齢化の進み方がわかります。
そのような現状の中、トラックの運転免許を持ちながらハンドルを握っていない『女性潜在ドライバー』の活用や、長年培ってきた経験や知識、資格を持った高齢者を活用しない手はありません。そのためには、女性・高年齢者も働きやすい、よりホワイトな労働環境を目指す『ホワイト物流』を実現しなければなりません。
具体的には、女性が働きやすい環境を整えることでは、省力機器の導入を行い手荷役の見直し、そして休憩室、女子専用トイレ、パウダールーム、男女別の着替えロッカールームの整備や、育児休業制度を整えて定着させる必要があります。子育て環境を整えるための幅広い視点から職場環境改善を行い、女性が安心して働ける職場にしなければなりません。
2014年以降、国交省が旗を振り、国をあげて女性ドライバーの雇用促進を図る「トラガール促進プロジェクト」も動き始めています。高齢者には短時間勤務でも可能な業務の創出や、ワークライフバランスを推進させて経験や知識、資格をフルに活用させて、若年者などにその知恵を伝えてもらいながら、やりがいを感じる職場作りをしていかなければなりません。事業者が主旨をよく理解して前向きに進めなければなりません。
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トラック業界の勝ち組企業が実践する、未来への戦略
多くの問題を抱えるこのトラック業界で勝ち組として生き残るために、デジタル化の促進、人材の確保と育成、環境への意識を持ち続け未来を考え続けることのできる力が重要になってきます。
・デジタル化への積極的な投資
トラック業界で勝ち組企業として生き残るためには、まずは経営者が運送業務効率化のためのITリテラシーの重要性をよく認識しなければなりません。ITリテラシーは、『ITに関する知識を適切に理解して活用する能力』のことです。新たな機器の導入も、ITをよく理解し、社内での教育・普及を行える人材登用も必要となります。ITリテラシーによって運送業務の効率化を行うことができます。
人の手で行ってきた作業を自動化したり、AIの搭載された機器を利用することによって手間も時間も削減することが可能になります。そして、ITを理解して、活用するには投資が必要になります。
そのためにも経営者がITリテラシーの重要性をよく認識しなければならないのです。全日本トラック協会から届く業務効率化に関係するITリテラシー関連の情報にはよく目を通したり、業界での横のつながりを大切にして情報交換は密にするなど、絶えず最新の情報が入ってくるようにしてください。ITの技術は日進月歩で、日々進化しています。
まずは経営者がその進化に遅れず、ついていくことです。今の運送業界の現状はIT業界からも注目の的です。一獲千金を狙うIT関連業者が切磋琢磨して運送業界の業務効率化を考えています。デジタル化への積極的な投資がタイミングよく行えるように、経営者はアンテナを立てて、そのチャンスをうかがってください。
・人材確保と育成への注力
企業は『人』によって成り立っています。少子高齢化による人材不足はその根底を揺るがす大問題です。日本という決まった器の中での人材の確保をしていかなければなりません。
しかも優秀な人材を確保しなければ会社の繫栄には繋がりにくいです。そのためには、魅力的な労働環境の整備が必要です。具体的には労働者が満足できるだけの給与であり、福利厚生です。ライフワークバランスをかけ声だけに終わらせずに、週休二日や、8時間労働をルール化し、魅力的な労働環境を作り上げなければなりません。そして、人材を育てることも考えてください。
即戦力となる経験者が見つからなくても、育てることを考えて人材の採用も行ってください。社内に資格取得支援、研修制度などのスキルアップ支援を用意し、社内の人材の成長を促し、コストをかけて未経験者を育てるつもりで採用することも必要です。人材がやってくるのを待つだけでなく、人材を育ててください。売り手市場であるトラック業界では、人材を育てながら持続的に成長できる企業を作っていかなければなりません。
・環境への配慮とサステナビリティ
トラック業界の勝ち組企業が実践する、未来への戦略の一つとして、環境への配慮とサステナビリティがあります。具体的には環境性能に優れた次世代トラックの導入であり、エコドライブの推進などです。
他にもアイドリングストップの推進やEMS（エコドライブ管理システム）関連機器の導入などがあり、トラック業界全体で推進しなければならない輸送効率化への取り組みもあります。環境負荷低減の取組みを行うことは、運送業界でカーボンニュートラルを目指す取り組みである「トラック運送業界の環境ビジョン2030」につながります。
トラック業界の勝ち組企業が実践する、未来への戦略として不可欠な課題です。
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消費者視点で取り組めること
2024年問題は運送業界だけでなく、消費者もその当事者の一員であるという意識を持たなければなりません。EC事業の浸透によって、消費者のニーズが多様化し、その対応も運送業界の業務の煩雑さを増す一因となっています。そして、今後予想される2030年問題はさらに深刻化するドライバー不足問題であり、少子高齢化に歯止めがかかることのない現状で、免れることのできない問題です。
ドライバー不足に加えて、高齢化や人手不足が深刻化する物流倉庫内での荷役作業に、AIが入り込みロボット作業が増えたとされていますが、100％の対応はできておらず、いまだ人力に頼るのが現状です。
ドライバー不足から生じる『モノを運べない』状態ばかりか『モノを出せない』状態にもなっているのです。消費者はこれらの現状をよく理解して、運送業界の今後の動きを受け入れる必要があります。ドライバーや物流関係労働者不足を補う雇用のためのコストを上げなければなりません。
それによる輸送費の見直しが今後も続く可能性があります。そして、日本人の几帳面さから実施可能だった「約束されたリードタイム」や「日時指定」などの輸送品質の維持が困難になります。「不在配達」はニュースなどの報道にも取り上げられる配送時の大きな問題であり、今後の再配達には有料化も検討されています。今後の運送業界での輸送方法や輸送費の見直しが消費者には求められます。
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まとめ：変革期を乗り越え、持続可能なトラック業界へ
トラック業界における2024年問題、そして引き続き待ち構える2030年問題は避けて通ることのできない問題です。人口減少による働き手不足への対応をAIやロボットに頼るには、現状ではまだ無理があり、消費者はそのギャップをよく理解しなければなりません。
トラック業界は足を止めることなく、世の変化に対応する努力を続け、技術革新や人材育成にも余念がありません。しかし、それでも対応できないほどの大きな波なのです。
繰り返しますが、消費者の皆様にはトラック業界、日本全体が抱える問題を深く理解して、今後のトラック業界の動きに寛大な理解をいただき、トラック業界と消費者がともに歩み寄るかたちでこの変革期を乗り越えるものとご認識ください。そして、トラック業界は消費者の皆様方から大きな安心をいただけるよう日々、不断の努力を続けて持続可能なトラック業界を作り上げていかなければなりません。
トラックファイブは『豆知識』でこれからも皆様にさまざまな情報をお届けします。
